ペイフォワード③
光生の病室に、伯方、深見、太郎、葵が集まっていた。
太郎はどこかに電話を掛けている。
「あ、お疲れ様。光生君が目を覚ましたよ。僕らが誰なのかきっと不安に感じてると思うから、君から僕らを紹介してくれる?」
そう言うと、サイドテーブルの上にスピーカーをオンにしたスマホを置いた。
電話の相手は俊葵だった。
『畠山。怪我大変だったな。痛むか?』
「いえ...今は痛み止めを飲んでるんで何とか、ホント色々すみません。」
『いや。それはいい。
怪我の方は、深見先生がいらっしゃるから大丈夫だ。
それより本題に移ろう。
そちらにお揃いなのは、伯方さん、深見先生、太郎さん、葵ですね?』
「おう、」「はい。」「うん。」「ええ。」
『畠山。伯方さん、深見先生、太郎さんは、子供の頃俺を助けたくれた恩人だ。葵は俺の妹で間違いない。信用してくれていいよ。』
「はい。」
『畠山。ウチの敷地に車が入ってくる音を聞き、驚いて階段を踏み外したと聞いたが、運転手や車はやっぱり見てないか?」
「見てないです...」
『そっか。じゃあ音は?』
光生は、上向きに目をキョロキョロ動かした。
「音ですか...うーん。ガソリン車かな。ディーゼルじゃないと思う。外車でもないかな。軽自動車よりは重そうで、ワゴン車よりは軽そう・・・」
『そっか。』
「すいません。参考にならなくて、」
「いや、そうじゃねぇぞ。」
伯方が口を挟んだ。
「この島内にある車の台数は限られてる。軽じゃねぇって事は、軽トラも除外できるって事だ。更にディーゼル車が除外できるとなると、台数はぐっと絞れるからな。」
「だとすると、残りは自家用車とレンタカーになりますね。」
太郎だ。
『その後、家の方には誰か行ってみたんですか?』
「いや。敷地内には誰も。だが、向かいの白石さんの作業小屋にカメラ据えさせてもろうとるよ。」
『さすが伯方さん。』
「いんや用心のためさ。昨日の今日じゃまだ何も写っちゃおらんだろうがな。よし、では本題に移ろう。まず、お互いの現状をまず共有しようじゃないか。」
伯方が言った。
『ええ。じゃあまず俺の方から。俺は昨夜から自宅には戻らずにホテルに滞在してます。夕べ、尾行されたんですよ。』
ハッ、
一同は息を呑む。
ハハ、
『今は大丈夫です。実は尾行に気が付いた経緯が結構込み入ってるんですけど、』
「と言うと?」
『付けてたのは例によってプロですね。取り敢えず昨日の事全部聞いてもらえますか。そうじゃないと何言ってるかサッパリだと思うんで、』
俊葵は、前橋との面会から今日までに起きた事を話し始めた。
話を聞き終えた伯方が頭を抱えた。
「よもや高峰 由稀世の名前を聞こうとは、」
「これはこれは、」
と、深見。
「鈴木先生?大丈夫ですか。」
太郎の異変に葵が気づいた。
「あ...いえ。」
額から流れる汗を焦ったように拭う太郎の顔は真っ青だ。
『太郎さん。太郎さんのせいじゃない。自分を責めないで下さい。』
俊葵が言うと、
「う、うん...」
太郎は項垂れた。
「先ほど、この件に直接関係ないだろうからと、太郎さんは言いましたが、」
そう言って深見が葵に目を遣り、光生を見た。
「どうやらあの事件を抜きには語れないようですね。」と微笑む。
そして電話口の俊葵に話しかけた。
「俊葵さん。あの晩の話をしても良いですか?」
『あ、はい。もちろん。』
そして、項垂れたままの太郎の顔を覗き込むようにする。
目が合った太郎はコクリと頷いた。




