親切は人のためならず①
遠隔会議以来、俊葵からの連絡がない。
一見、淡々と学校に通っている風真だが、心の中は淡々とは程遠かった。何度、港と学校との行き来に使っている自転車を沈丁花の館に向けた事だろう。その度に、光生の安全のためだと自分に言い聞かせ、グッと堪えてきたのだった。
しかし、昨日から、肝心の光生とも連絡が付かなくなった。
連絡と言っても、風真がインスタをアップし、その後家の黒電話を鳴らすという方法でなのだが、いくら鳴らしても受話器を取らないのだ。
連絡が取れなくなる前の日、母親の涼風が訪ねた時の光生は、機嫌が良く、とても元気そうで、料理と引き換えに、きちんと洗ったタッパーを返してきたという。
何か変わった事はないかと尋ねると、退屈だけど、トレーニングで気を紛らわせていると言っていたというから、すぐに電話に出なくても、きっとランニングでもしているのだと気にしないようにしていたのだが、
気がかりな事に、今日は朝から雨が降っている。トップアスリートは、雨の中でもランニングをするのかも知れないが、風真の連絡を絶ってまで没頭するとも思えなかった。
風真は今一度と、黒電話の番号をタップした。やはり何度掛けても同じだ。
次に、俊葵の番号をタップする。これも同じだった。
ーー何か良くない事が起きているーー
ふと、インスタを更新せずに黒電話を鳴らした事に気が付き、風真はアプリを開いた。
そこで、フォロアーの更新を知らせるポップアップが目に留まる。
「ん?Aoi Yuge…あ、葵さんか、」
俊葵の妹の弓削 葵だとピンときた風真は、するともなくその投稿を開いた。
その投稿自体は何かの展覧会で賞を取った息子の桂葵の絵をアップしたという何気ないものだったのだが、その絵に目を奪われてしまった。
インスタを閉じた風真は、すぐにラインを立ち上げ、電話のマークをタップする。
五、六回のコールの後、葵の声が聞こえてきた。
『風真君?』
やや怪訝そうな声だ。大して親しくもない風真の電話に出ない可能性だって有ったはずで、それでも出てくれた葵に胸がじーんとなった。
「あ、あの、僕です。風真です。突然お電話してすみません。あ、インスタ、桂葵君の絵見ました。」
『ま、ありがとう。上手に描けてるでしょ。ふふ。親バカね、』
「あ、はい。とても上手です。で、あの…描かれてるあの花、沈丁花ですよね。』
『ええ。島のあの家のね。』
「あーやっぱり。あの、こんな事急に話して、どう思われるかとても心配なんですけど…」
風真はゴクリと唾を飲み、俊葵と涼風の三人だけと約束したその秘密を、葵にも打ち明けたのだった。
ご無沙汰致しております。久しぶりの更新です。
話が主人公である風真からかなり離れた所に行き始めたので随分考えたんですが、更新済の部分も大分手を入れていく事にしました。
削除部分も結構ありましたので、さらにスピンオフを出す事も考えようかと、
しかし、今はそれよりも完結を目指さねば・・・・
よろしくお付き合いいただければと思います。




