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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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君を守る③

今日は風真が来なかった。

昨日来たばかりだし、風磨は生活を極力変えるなと俊葵に言われている。この家の事を誰にも知られないためだ。


涼風の料理は美味いし、畑の真ん中の一軒家だから、静かだし、風真と俊葵と涼風の好意だけで成り立ってる生活。感謝してもし切れない。

これほど長く自転車に乗っていないのも、競技生活に入ってから初めてのことじゃないのか?

家の外はダメだけど、斜面に面している庭ならちょっとは出ても大丈夫だろうって言われた。だけどそれでは身体を動かした内には入らない。


ーーあー、暇だ、身体がウズウズする

もう、週刊誌は出た頃だな。

何て書いてあったんだろ?

まあ、何でもいっか。

あいつらが、こっちに好意的な事、書く訳ないし、

好意的な事書いてたら、逆に気持ち悪いしーー


ゴロリとマットに横になる。


スマホがsnsの着信を告げた。

画面をタップする手が震える。

万が一、記者にIDが漏れた事態を考えてしまっていけない。


風真のインスタが更新されたようだ。

風真は、撮った写真を時々ここで披露している。

言葉が添えられている時もあるが、大抵は数枚のスナップを上げるだけだ。


今日の更新は…ん、電話?

この電話どっかで見たような…


すると、家の中でベルの音が鳴り始めた。

俺に宛てがわれている部屋を出る。

音が鳴っているのはリビングの方らしい。


鳴っているのは電話だ。

ジリリーン、ジリリーン、

二度三度、音をやり過ごす。

でもまだ音は止まない。


!!

そうだ!この電話、風真がインスタに上げてた電話にそっくりなんだ。

光生は大きく息を吸って、黒くて重い受話器を持ち上げた。



「良かった。やっと出た。」


風真のホッとしたような声。

光生も息を止めていたのか、大きくため息をついてしまった。

しかし、この電話にかけてきているという事は…

心臓が早鐘を打ち始めた。


「風真!、何かあったか?」


風真が音もなく息を飲んだのを感じる。

一秒に満たない間が空き、その後、落ち着いて優しげないつもの風真の声が戻ってきた。


「光生君。そこに居るのは光生君だけ?」


「ああ。」


ーーそうだよ。ずっと一人で風磨の事ばかり考えてるーー


「家の周りに誰か人が居た様子はなかった?」


「ないな。周りのミカン畑も今は農閑期だろ?物音はほとんどしなかった。」


「そっか。」


風真がもう一度、今度は音を立てて息を吐いた。


「光生君。まず一つ謝らせて。」


「ん?」


「光生君に関する事で新たに知った事があって、それを光生君に話すより先に、僕のお母さんと俊葵さんに話したんだ。ごめんね。」


「んん?何だか知らねぇけど、風真がその方が良いって判断したんだろ?なら良いよ。」


ーー嘘。めっちゃ気になった。でも、風磨が俺の反応を気にしているの可哀想だから。カッコつけてみただけーー


「う、うん…」

風真の声が少し涙ぐんだようになった。


「風真?大丈夫か?」


「うん。あは、大丈夫。それからこの後、俊葵さんからも電話が掛かる。その説明は俊葵さんに任せたんだ。良い?」


「…いいよ。」


「しばらく僕はそっちに行けないんだ。その説明も俊葵さんがする。」


「…ああ、そうか…」


十秒か、三十秒か一分か、沈黙が流れ、風真はそおっと言った。


「僕は光生君を信じてる。ずっと味方だよ。それだけは忘れないで。」



















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