君を守る②
最終のフェリーにギリギリだと知ると、川東は風磨を車で送っていった。
今晩、川東は寮監の係で、寮に泊まり込みなのだそうだ。
最終便の甲板には人気は無かった。
昼間は生温い風も夕方になると肌寒く感じるようになってきた。
風磨の沸騰しそうな頭には、その冷たさが気持ちいい。
チラホラ見えていた島の灯りが小さくなっていく。
もう何度も見つめた風景が、いつもと違って見える。
スペインの後、無事だと連絡があったけど、その後の連絡が無い。
風磨がそう伝えると、川東は明らかに落胆していた。
それについて、風磨は嘘を言っていない。
インスタのDMでのやり取りの後、光生は連絡を絶ち、いきなり俊葵の家を訪ねてきたのだから。
今、風磨は川東との約束を破ろうとしている。
川東から聞いた話を俊葵に話すつもりだ。
「よくやった風真。先方も恐らくお前とsnsで連絡を取り合っていたことまでは調べが付いているんだろう。その川東先生もそれを聞かされていたのかも知れないしな。」
「明らかにがっかりしてたからね。」
「それって、川東先生が風真の言うことを信じたって事でしょ?風真の線はこれで諦めてくれたんじゃないの?」
横から顔を突っ込んできて、涼風が言う。風磨が非難がましく見遣ると涼風は、両目ウインクを返してきた。
家に帰った風真は、俊葵に連絡する前に、涼風に全てを話した。
潜伏生活が始まったあの日から、光生の食事や生活雑貨の面倒を見てくれてるのは涼風だし、妙に勘が鋭い母親に、隠し事ができる自信がなかったから。
その話を始めは神妙な面持ちで聞いていた涼風だが、話し終わるなり、スマホは盗聴されるかもとか言い出し、ノートパソコンを起動させた。俊葵も東京の自宅で、zoom会議だ。
俊葵がクスッと笑う。
「全く。盗聴とか、相手が本気出したら、パソコンでもスマホでも同じことですよ。」
涼風が肩をすくめた。
「まあね。ちょっとスリルっぽい事言ってみたかったの!
でも、これからどうしたらいいのかな。居場所がバレるのも時間の問題よ。」
「そうですよね。どんな経緯で、畠山が追われているのか、まずそれを知らないことには話は始まらない。対策はそれからだ。俺は明日、前橋会長に会って来ます。会長の事だ。もう、かなりの情報を掴んでいると思うんですよ。
そこで風真、お前に頼みたいことがある。」
「うん。何でも言って。」
「恐らく会長は盗聴を恐れて、畠山のスマホに連絡していないはずだ。畠山本人にも、snsで発信しないようには言い付けて別れたんだが、風真には連絡してきてないよな?」
「うん。俊葵さんに言われてるからね。二、三日に一回、直接家に様子見に行ってる。だから連絡は取り合う必要ないし、」
「それでいいぞ。でも、これは不測の事態だ。自分の置かれてる状況を知らせてやる必要がある。あの家にはパソコンさえ無いし…あるとしたら家電なんだが、」
うーん。
風磨は腕組みした。
ただ俊葵の家電を鳴らしても意味はない。
それは他人のスマホに勝手に出る事はないのと同じで、鳴っても無視するのがマナーってものだ。
あっ!
風磨はスマホを出して、フリーの素材を探し始めた。すぐに、俊葵の家の電話に似た画像を探し当て、それをスクショして、インスタに上げ、その画面を俊葵に見せた。
「いいよ。今なら多分、電話出ると思う。」
「お前の発想の豊かさには、恐れ入るよ。」
俊葵のギャングの微笑みを最後にzoomが終了を告げた。




