スプリンター②
風磨は光生にメッセージを返信した。
すっかり安心した風磨は、俊葵が『今夜はやめとこうや。』と言うのを、せっかく掴んだ感覚を感覚を逃したくないからと、続きのプリントを強行した。
ーーだって、光生君が帰国した時に、僕自身が納得した作品を見せたいからさ、ーー
印画紙を露光しては現像、水洗、乾燥、俊葵の授業と、器具の片付けまで終わった頃には日付はとっくに変わっていた。
ドンドン、
玄関の重厚な木製のドアを叩く音で目が覚めた。
ベッドに入ってから、そうは経っていない。
風磨が慌てて廊下に出ると、俊葵も出てくるところだった。
酢酸の匂いが気になって、シャワーを浴び、髪を乾かさないで寝たから、風磨も俊葵も頭が爆発したみたいになっている。
「何だろ?地震とかそういうんじゃないよね?土砂崩れとか、」
「お前、揺れに気づいたか?それに、こんな天気だぞ?」
俊葵が廊下の真ん中の天窓を指差す。差し込みはじめた太陽が白い壁に反射して、眩しいくらいだ。
「そ、そだね。取り敢えず出てみる?」
「ああ、俺が行く。」
「僕も行く。あ、待って!台所で包丁持ってくる。」
「それはかえって危険だ。やめとけ。玄関脇に父親の野球のバットがある。誰ぞのサイン入りだ。」
「それがいいね。」
二人は、そろそろと足音を忍ばせて、依然として叩き続けられる玄関のドアに近づいていった。
「どなたですか?」
俊葵が口を開く前にと、風磨が口をひらいた
ギロッと風磨を見る俊葵。余計なことをするなという意味だろう。
『いいから!』
風磨は口パクで口答えした。
ーー余計なこともするさ!いつもの俊葵さんの口調で、『誰だ?』とでも言おうもんなら、たとえ平常心の相手でも、ゴングを鳴らされたと解釈するかもしれないからねーー
すると、
「あ、良かった。風真やっぱりいた。」
ドアの外の人物が返事を返してきた。
風磨は目を剥き、俊葵は、それを見てぽかんとした。
風磨は慌てて施錠を解き、ドアを開ける。
そこに立っていたのは、光生だった。




