理解不能な親友
高人と帰るようになってから、本を沢山読んだ。
特に古い小説を読む時は大変だった。
知らない言葉、漢字…それら全てを辞書などを使って調べ、読み進める。
それだけで時間もかかるし、面白くない本だった時は特に憂鬱だった。
でも、そんな本も全部最後まで読んだ。
何故かは分からないけれど、どんなに難しくて、面白くなくても、全ての本が輝いて見えた。
高人と話せるようになるよ、言葉をたくさん知れるよ……そんな声が一つ一つ本から聞こえてくる、気がした。
高人は授業と掃除が終わると直ぐに図書室に来てくれる。
どうやら、今まで放課後に遊んでいた友人達と関わることを辞めてしまったらしい。
そのため、高人の周りからは人がどんどん減っていっている。
その事を知って、私は嬉しいような、でも申し訳ないような複雑な気持ちになった。
私を大切にしてくれるのはとても嬉しい。
私なんかに優しくしてくれるのは、高人と、後は祖父くらいだから。
でも、高人の周りから友人を奪ってしまっている原因が私にある、ということに罪悪感を抱いてしまう。
ある日、私がいつも通り図書室で本を読んで高人を待っていると、高人が来た。
しかし、今日は高人の隣に男の子が一人いた。
「やぁ、君が高人が毎日遊びの誘いを断ってまで会いに行っている女の子?」
彼は笑顔で私に話しかけてきた。
「おい、こいつに変な威圧かけるな!
こいつは……華は、俺の……妹だ。」
高人が少し照れて、目を逸らしながら言った。
!!!!
妹……妹って言ってくれた……!?
名前も、華って呼んで…くれた?
胸がふわっと浮かび、いつもより熱くなった。
この反応に私の脳は対応出来ず、しばらく頬を染めてフリーズ状態に入る。
そんな私を無視して2人が続ける。
「妹?…………!!あっこの前俺が公園で聞いた女の子がこの子か!?」
「そうだ。華っていう。」
「へぇー、やっぱり白くてちっちゃくてヒョロっこいなぁ!ははは」
男の子は人懐っこそうな笑顔で笑っている。
やっと反応が落ち着き、いつも通りの状態に戻った私は本を元の場所へ戻すために席を立った。
「あ、手伝うよ!1人じゃ大変だろ?これはどこのやつ?」
男の子が本を戻す手伝いを申し出た。
驚きを隠せない。
何故、当たり前のように普通に私に接しているのか。
何故、私なんかの為に手を貸してくれるのか。
普通なら私のことを、気味の悪いだの、悪魔だの罵り、蔑むのが当たり前。
なのに、この男の子はそんな態度はひとつも見せず、挙句私に手を差し伸べてさえくれている。
理解、不能。
ポカーンっとまたフリーズしている私に男の子は「おーい、大丈夫か?」と声をかけてくる。
「怜、華は喋ったりするのが苦手なんだ。
あと、恐らく自分に普通に接してくるお前のことが理解出来ないんだ。
しばらくそっとしておいてやれ。」
「?あ、あぁそうなのか。何となく分かった!」
そう言って高人がフォローを入れてくれ、私がフリーズしているうちに2人で本を戻してくれた。
「あ、自己紹介してなかったな。
俺は怜。高人の親友だ!よろしくな、華!」
図書室を出る際に怜が自己紹介してくれた。
優しい笑顔が素敵だと思った。
私は、コクリ。と頷いた。
その日の帰り道は3人で帰った。
怜の家は私達の住んでいるマンションの近くにあるらしく、3人で歩く帰り道は2人の話が盛り上がり、とても聞いていて楽しかった。
まだ頷くことしか出来ないけれど、この2人とこんな風に毎日楽しく、私も喋りたい。
もっと、頑張ろう。