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芽生え

目が覚めると私は家にいた。

時計を見ると夜中の1時を針が示していた。

体を起こそうとすると、体のあちこちに痛みが走った。手当ては既に済んでいるのだと思う。


改めて体を起こすとひざの辺りに何か重さを感じる。

高人が私のひざで眠っている。

ずっと、一緒にいてくれたの、かな。

不思議な感情に襲われた。胸のあたりがふわっと温かくなるような。


手当はされているようだけれど、お風呂には流石に入れられていないようなのでお風呂に入ることにした。

高人を起こさないように気をつけて、布団をかけて離れた。




お風呂に入ったあと部屋に戻ると祖父が帰ってきていたようで、高人を部屋に運んでいた。


祖父が高人を部屋に運び終えた後、私に静かに話した。


「学校に今日の事情を話してきた。

やっとお前さんを助けられたと思っとったんじゃがまた、辛い思いをさせてしまったな…すまんのぉ。」


祖父は私に謝罪する。

私は首を横に振る。

何も気にしていない。慣れているから。

その様子から私の気持ちを感じ取ったのか祖父は少し悲しそうな目をして、困った顔をしていた。


「お前さんは十分苦しんだ…もうこれ以上苦しむ必要は無いんじゃ。

幸せになって欲しい。少しずつでも構わんから。」


幸せ。それは何だろうか?今の私では幸せが何かまだ分からない。

でも、高人が傍にいると約束してくれた。これは私にとって大切なもの。








翌朝、再度目が覚める。

部屋で着替えを済ませ身支度を整えて朝食をとりにリビングへ向かう。


高人と祖父がもう席に着いていた。

「おはよう、華!」

祖父が明るく私に声をかける。


どうしたらいいか、まだ慣れず、軽く頭を下げて席に着き、朝食をとった。




「華、学校行くぞ。」

高人が私を呼んだ。少し驚いたけど、また、胸がふわっと温かくなった。

ランドセルを背負い駆け足で玄関に行き、鍵を閉めて高人と学校へ向かう。




登校中もちろんいつも通り、私を見た人達は嫌な目を向けてヒソヒソと話す。

その様子を見て高人が私を自分の影に隠すようにして、大人達を睨みつけた。


高人の子供とは思えない威圧感に気圧され、大人達は散っていった。

私は高人の手に少し触れた。

そしたら高人が私の手を取り、強く握り返して繋いでくれた。

また、胸がふわっと温かくなった。



「お前のことは俺が守るから、俺の影に隠れてろ。」


コクリ。


「後、今日から帰りも一緒だ。お前は弱いから、また虐められでもしたら俺がジジィに殴られる。」


私は2年生で高人は4年生だから帰る時間が少し異なる。

私はその間学校の図書室で過ごす事にした。

絵本、漫画、小説、辞典、図鑑、参考書……etc.

色々な種類の本を手に取った。

高人ともっと話したい。

だから、本を沢山読んで言葉を知る。

上手く、繋げられるように。

頷くこと以外も出来るように。

自分の思いを声で伝えられるように。

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