天使でお姫様
何故自分でも、あんなことを言ったのか分からない。
でも、あいつが「自分の存在価値は0」って言った時、何処と無く自分と似ているような気がした。
だから俺はあの時口にした。
「俺がお前の傍にいれば、俺に助けを求めるようになるか?
俺に…そばにいて欲しいと、必要だと、言ってくれるか?」
それはきっと俺自身が、あいつに。華に。存在する理由を求めてしまったんだろう。
優しく華の頬に触れると、華は何かに安心したように、泣き疲れて寝てしまった。
そんな華を背負って家に帰る。
日はもうすっかり沈んでいて街灯が点々と等間隔に道を照らしている。
家に着くとジジィが帰ってきていた。
いつもよりも遅く帰ってきた俺とボロボロの華を見て、とても驚いていたが、すぐにその顔は鬼のようになり俺にゲンコツを落とした。
「馬鹿者!何時だと思っとるんじゃ!?どこほっつき歩いておった!
華をこんなボロボロにしよって!!」
「いってぇぇぇ!!ふざけんな何殴ってんだよ!?」
「うるさいっ!なぜ華がこんなにボロボロなんじゃ!!まさか、お前さん虐めたんじゃなかろうな!?」
「俺じゃぁねぇよ!!
クラスの奴らとその親達にやられたらしい…」
俺は殴られたことに腹はたったが、今日あったことを話した。
でも、最後の華とのやり取りだけは話さなかった。
ジジィは俺の話を聞いてしばらく黙っていたが、考えがまとまったのか、どこかへ電話をかけてから出ていってしまった。
俺はジジィが買ってきたんであろうお弁当を食べて、お風呂に入った。
そして、後はずっと眠っている華のそばにいた。
眠っている華は、教会の天井や絵画に描かれた天使のようだった。
普段は俯き、白い髪に隠れて顔があまり見えないためしっかりと見たのは今日が初めてだったが、思わず見惚れてしまう程に華は可愛らしい顔をしていた。
今はまだ髪が短いが、きっと今後もっと伸びていくとお姫様のようになるだろう。
そんなふうに華のことを眺めているうちに眠気に襲われて、俺は気づいたら眠ってしまっていた。