独りぼっち。
家に帰ると電気が付いていない。
あいつが先に家にいるはず。
ただ付けていないだけか?それにしては随分と静か過ぎる。人の気配がまるでしない。
ふと玄関で足下を見渡す。
靴が、無い。
「は、?なんでいない……とっくに学校、終わってるはずだろ。」
状況についていけない。
時刻はもう6時を過ぎていて、日もほとんど沈みかけている。
学校はとうに終わっているはず。
ふと朝ジジィが言った言葉を思い出す。
「馬鹿者!華はまだここに来て日が浅い、何よりあの子は……」
ジジィはあの後何を言おうとした?あいつが何だって言うんだ?
高人は自分はもしかして、とんでもないことをしてしまったのではないか?という不安感に襲われた。
家を飛び出す。急いで学校まで向かう。
その間の道に華がどこかに居ないか探す。
しかし、居ない。
学校にも着き、中から外全て探したが見つからなかった。
高人は必死に探した。学校・家の周り、通学路……
しかし、華はどこにもいない。
ふと、近くで人の声が聞こえた。
誰かと話している…?いや、独り言?
その声に耳をすませて、周囲を探ると住宅地の端の方にあるもうほとんど使われていないであろう小さな公園を見つけた。
そこに、白い髪をした少女が見知らぬ男に腕を引かれて、今にもどこかへ連れていかれそうになっていた。
数時間前。
一人で帰ろうとした。でも途中でクラスの数名の人達とその親に遭遇して、虐められた。
「この子が転校してきた子?まぁ気味の悪い子どもね…特にこの髪色、変な病気でも持ってるんじゃないの?」
「お前ウザイんだよ!話しかけても喋んないし、シカトすんなよ!何いい子ぶってんだよ!」
口々に私を罵り、殴って、蹴って、髪を引っ張った。
しばらくすると気が済んだのか彼らは帰って行った。
連れてこられた所は私が来たことのない古びた小さな公園だった。
しかし気づいた時には既に遅く、家への帰り方が分からなかった。
私は……何故生まれたの。?
全身が痛い。
悪魔の子というのなら、何故私は生まれたの?
独りぼっち。
幼い頃から一方的に言葉を吐かれて来たため、返事の仕方、思いの伝え方、それら全てが分からない。
ただ私には、拒否、喋る、存在する権利が無い。
だから、本当は帰り道が分からなかったとしても、頷くことしか出来ない。
それしか知らない。
日はどんどん沈んでいき、もうその姿がほぼ見えなくなる頃になった。
一人の男が私に近づいてきた。
「お嬢ちゃん、一人?何してるの?」
返事が出来ない。
薄暗い中に浮かぶ男がとても怖い。顔がイマイチ見えなくて。でも、口元はニヤついていた。
「お家には帰らないの?親御さんは近くにいないのかな?」
何だろう。この男は今までの人達とはまた違った、恐怖。嫌な感じがある。
腰から背骨を伝って体全身に伝わる震え。
どうしたらいい。
分からない。
誰も助けてくれない。
分からない。
動けない。
分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない!!!!
何も反応しない、フリーズしている私に男が手を伸ばす。
腕を掴まれた。
とても力が強い。細々とした腕は折れそうだったくらい。
引かれる。どこかへと連れていかれる。
私は……………………。