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学園の神聖ヒロインとなし崩し的同居生活!  作者: 坂井ひいろ
第三章 同居生活を守れ
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038 頭をのせて

「三洋、ここに頭をのせて」


 八島鈴やしま れいは汚れないようにショートパンツ姿で膝の上にタオルを敷いて告げる。私立開南学園高校を代表する美少女の膝の上に頭をのせると考えただけでも落ち着かない。タオルの下の柔らかそうな膝を思い描いてゴクリと喉が鳴る。


「どうぞ」


 八島鈴はやわらかい笑顔を向けて、膝の上をポンポンと叩いて促す。こうなったらやけくそだ。床屋だって顔くらい剃ってくれる。問題ないと覚悟を決めて八島鈴の膝の上に頭をのせた。


 んんっ。ソファーともベッドとも違う感触。ハリがあるのに柔らかい。ほんのりとした甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。男の子だったら誰もが憧れる夢心地の場所を、自分が独占していると思っただけで心臓が爆発しそうだ。


 八島鈴の膨らんだ胸元を下から見上げる格好になる。八島鈴を神聖ヒロインとしてあがめる男子が知ったら瞬殺間違いなしの状況に心臓が高鳴る。


 ソファーの前のテーブルに洗面器とタオル。古谷三洋ふるや みひろは蒸しタオルを顔にのせられた。


八島鈴はシェービングクリームのムースを手に出すとミントの爽やかな香りが広がった。八島鈴の指先が顔の上に泡状のクリームを塗っていく。


 他人に自分の顔を触られるのは何だか変な気分だ。くすぐったさもあるが心地よさもある。何とも言えない感覚に古谷三洋は戸惑った。


 メチャ、恥ずかしい。髪の毛を切られるのとは全然違うぞ。今頃になって怖気づく古谷三洋だった。


「早くしないと泡が消えちゃうね」


 シェービングクリームでスース―しているはずの顔が熱くなってくる。


「じぁあ、剃るね」


 八島鈴の左手が頭に触れて彼の顔を剃りやすいように横に向けた。目の前に八島鈴のお腹が・・・。ミントの香りで消えていた、甘い香りが強くなったような・・・。恥ずかしすぎる状況に古谷三洋は目を閉じた。


 ジョリ。ジョリ。


 ほほの上を、産毛を剃り取りながらカミソリが滑っていく。目を閉じているために余計に感覚が鋭くなる。火照ったほほを押さえる八島鈴の指先の冷たさを感じる。


 髪を切られる以上に心地よいその感覚に脳がとろける。額や眉、鼻の頭や耳まで触られる。下唇の下を剃る時に八島鈴の指先が古谷三洋の唇をそっと押さえた。


 これって・・・!ある意味、彼女の指先にキスしているのと同じだよな。自分のゴツゴツした指の感触とはまるで違う。何とも表現できない心地よさに感動すら覚える古谷三洋だった。


「ふふっ。気持ちいいでしょ」


「うん。気持ちいい」


「でしょ。私、男の子の顔を触ったのは初めてだよ。三洋が喜んでくれて嬉しい」


「鈴、ありがとう」


「どういたしまして」


 手を動かしながら、ふんわりとした笑顔を差し向けてくる天使に素直に答える。一般的な男子よりも小顔の古谷三洋、剃り取る場所は直ぐになくなってしまう。


「はい、おしまい」


 終了を宣言されてしまった。まだまだずっとこのままでいたいと心が残る。八島鈴も物足りない気持ちでいっぱいだった。


「ふふっ。お願いしてくれたら、お耳の掃除もしてあげようかなー」


 膝枕で耳かき!ラノベの定番イベントに古谷三洋の心は躍る。心がとろけてしまおうが、もはや抗うことなど考えられない。起き上がった古谷三洋は剃り跡をタオルで拭き取る。顔を隠したまま言った。


「お願いします」


「よしよし。三洋はいい子だねー。じゃあ次は耳かきだ。おいで、三洋」


 八島鈴は膝にのせたタオルをとって、右手でポンポンと生足を指し示す。魔法でもかけられたかのように古谷三洋の小さな頭はその上に納まった。


 八島鈴の膝から直接伝わる生々しい感覚に脳がシビレる。甘い香りがさらに一段アップしている。耳の中をコショコショされる心地よすぎる感覚に、しばらく思考を停止させる古谷三洋だった。


「そろそろ、交代の時間だよ」


 八島鈴に言われて古谷三洋は思い出す。そうだった!僕も八島鈴の顔剃りをすることになっていたんだった。彼女の整った顔をあちこちさわると思っただけで照れてしまう。


 遊園地に出かける前に、朝から全ての気力を使い果たしそうだぞ。八島鈴の頭を膝の上にのせて古谷三洋は思うのだった。

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