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学園の神聖ヒロインとなし崩し的同居生活!  作者: 坂井ひいろ
第二章 二人の学園生活
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018 巨漢クマと猛獣使い

 大盛ラーメンを買って戻ってきた山根浩二やまね こうじは、あきらかに機嫌が悪い。こいつが食べ物を前にして顔をしかめる姿は、未だかつて一度も見たことがない。


 古谷三洋ふるや みひろは隣り合って座る山根浩二と星宮花蓮ほしみや かれんの顔を交互に見比べる。ヘンテコ極まりない組み合わせに戸惑いが隠せない。


 二人は知り合いか?が、僕は一度だって山根浩二から学園のマドンナ、星宮花蓮の話を聞いたことがない。


「コウちゃん!古谷くんに私をご紹介してくださらない」


 山根のことを下の名前を短縮した上に『ちゃん』付け・・・。ニコッと笑う星宮さんは明らかに山根のことを知っている。てか、かなり親しい間柄あいだがらと考えていい。


 それにしても巨漢男子と美少女、星宮花蓮。並んだ姿は美女と野獣。いや、好意的に言えば大関と姉さん芸能人妻と言ったところか。


「・・・」


 山根はうつむき、大盛ラーメンを見つめている。


「早くしないと大好きなラーメンがのびちゃうわよ」


 星宮さんはニコニコと山根の横で笑っている。なんだか良くわからないが修羅場の雰囲気が・・・。


 食堂に集う生徒たちの目が注がれている。居合わせた全員が聞き耳をたてているんじゃないか。食事をとるどころじゃない。


 山根は口をモゴモゴさせてから、ボソリとつぶやいた。


「知っていると思うが、生徒会長の星宮花蓮さんだ」


 星宮さんは、ほほを大きく膨らましてむくれる。ガッシリとした大きな図体の山根の目が、ヘビににらまれた小動物のようにオロオロと空中をおよぐ。


「俺の許嫁だ」


「はい。良くできました」


 星宮花蓮の手がスッと伸びて山根の頭をなでる。巨大クマと猛獣使いか?


 って、嘘だろ!


 学園のマドンナ、星宮花蓮がよりにもよって巨漢デブの山根のフィアンセだと・・・。


 当然のことながら、異色の組み合わせである僕達の様子を伺っていた、食堂の生徒たちの驚嘆の声が渦となる。


「マジかよ。俺のマドンナが」


「私の憧れが・・・」


「死んだ。立ち直れん」


「うっそ、花蓮様ー。ウソですよね」


「デブ、殺す」


「世界は終わったわ」


「なぜ、デブなんだ。俺の方が・・・」


 僕も皆の意見に激しくそう思うぞ。が、星宮花蓮は意に介さずに、顔色一つ変えることなく微笑んでいる。僕の心臓とは大違いだ。


 山根はと言うと、顔を真っ赤にしてプルプルと巨体を震わせている。殺意の視線がグサグサと山根に突き刺さっている。


 山根浩二が突然立ち上がる。ビク・・・。僕の心臓が跳ねる。


「黙れ!食事がマズくなる」


 山根はぐるりと見渡して、声を張り上げた。


 そっちかー。山根。この状況でも飯が優先かよ!


 が、これはけっこうきいた。居合わせた全員が口をつぐむ。デブの迫力と言うやつか。


 まあ、怒った山根に素手で対抗できるやつなんてこの学園には存在しない。体育の先生だって一目置いている。正に眠れる獅子、いや、巨漢クマといったところか。


 山根浩二と星宮花蓮。意外な組み合わせの二人に注目が集まった分、俺への風当たりは完璧に吹き飛んだようだ。


「悪いな、古谷。変なことに巻き込んで」


「おう。気にしてないから。さあ、食べるか」


 答えてみたが、むっちゃ気になる。だが、ここで聞くのは野暮ってもんだ。


 火に油を注ぐ結果になるのは目に見えている。デブの一喝で黙り込んではいるが、周りの連中の耳は確実にこちらを向いている。


 仕切り直して、僕はお弁当のフタを取った。


 ぐっ!


 向かいに座る山根浩二と星宮花蓮の目が好奇心でキラキラしだした。


 八島鈴やしま れいの手作りお弁当。してやられた。

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