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配達人~奇跡を届ける少年~  作者: 禎祥
四通目 おまけの話
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7、木下楓の秘密

いつも読んでくださってありがとうございます。

こちらの話でストックが全て出し切ってしまったので、しばらく休載とさせていただきます。

新章のご用意ができましたら活動報告でお知らせしますのでまた宜しくお願いします。

 やぁ、皆の楓お兄さんだよ!

 え? お呼びでない? まぁ、そんなこと言わずに、ちょっと俺の独り言に付き合ってよ。



 俺の双子の弟が、ある日突然子供を拾ったんだ。

 拾った、というより、不法侵入して倒れてるところを助けたんだがね。

 びっくりしたよ。突然「声が聞こえる」とか言って他人ん家にずかずか入っていって、ガラスを割り出すんだからな。とうとう気が触れたかと思ったよ。


 子供を抱きしめたまま放さないものだから、一緒に病院に行ってもらって。警察なんかへの事情説明は俺。

 ついでに今回は人命救助ってことで不法侵入に器物破損も見逃してもらったけど。要が何かやらかして怒られるのはいつも俺。不公平じゃねぇ?



 で、警察から聞いたのはあの子がとても酷い環境にいたってこと。

 幽霊が視えるとか言って奇行が目立つって両親やご近所さんからかなり気味悪がられていたらしい。

 それを聞いて俺はブチ切れた。何だそれ? 親の気を引きたいにしろ本当に視えてるにしろ、一番不安なのはその子本人だろうが!



 まぁ、それはともかく。

 香月の両親は児童虐待で逮捕されたんだ。で、困ったのが香月の保護をどうするか。

 市の児童保護施設に送るってなったんだけど、要がそれを拒否してね。香月の入院治療費全額負担するから引き取りたいって言い出して。


「お前なあ。犬猫拾うのとはわけが違うんだぞ」

「わかってる。でも、俺にはあの子が必要なんだ」


 一応説得なんてしたけれど、要は頑として譲らなかった。

 同じく子供を引き取るなら、保護施設にいる普通の子供だって良いだろうに。


「俺が引き取ろうか?」


 香月が本当に幽霊が視えるって言うなら。それで苦しまされてるってんなら。楓より俺の方が香月を理解しフォローしてやれるかもしれない。

 そう思っての発言だったのだが。要は大丈夫の一点張りで。とうとう知り合いの弁護士やらなにやらありとあらゆる人脈(コネ)を使って引き取ってしまった。

 と言っても親権はまだ親元にあるから、単に保護しただけなんだが。



 要より俺の方が香月を理解してやれるんじゃないかって思った理由。それは、俺の秘密にある。



 俺は二年前、神隠しに遭った。

 いなくなっていたのは半年くらいだったが、その間俺はこことは別の世界にいた。それも、マスコットのようなきのこの姿になって。

 何言ってんのと言いたい気持ちはわかる。俺だってこれが自分の事じゃなきゃ頭おかしいんじゃないかって言ってるさ。

 最初は夢だと思った。何て変な夢だって。


 でも、起きたら夢の中で出会った女性がベッドにいて。恐ろしいほど月日が経ってて。仕事もクビになってて。

 どちらかというと帰ってきてからの方が大変だったな。失踪していた期間についての事情聴取。

 この世界の人間じゃないルナの戸籍を用意して。仕事も無くなって色々逃げるように実家に帰ってきたんだっけ。その時は要からけっこう良いパンチを貰ったもんだ。



 身近に異世界人、というか正真正銘の女神様がいる俺だから、たいていの事は受け入れられる。

 人には視えない物が視える香月を理解してやれるのと思ったのはそういう理由(わけ)だ。



 そんな香月が「配達人」なんてものを始めた。何でも、彷徨う幽霊達を救いたいんだと。

 あんな目に遭ったって言うのに、優しい良い子なんだよな。そんなん聞いたら協力するより他無いじゃんか。

 最初のうちは失敗したり危なっかしいこともあったから、陰ながらルナの能力で相手の事を調べて貰ったりする今の体制が出来上がったんだ。



 そうこうするうちに香月も大きく成長して、今となっては要の事を「お父さん」って呼んでて、心から笑えるようになってる。

 引き取った当時は遠慮してんだか警戒してんだか、わがままどころか碌に喋りもしなかったからな。

 これは要が心から香月に向き合ってきた結果だと俺は思う。同時に、香月によって要もようやく本来の姿に戻った。


 結果良ければすべて良しってな。

 色々反対したりもしたが、今は支えていこうって思ってる。あいつらがこの先何を選択してどう行動しようと、それが法に触れることじゃなければ見守るよ。

 人に言えないようなことは全部俺とルナで被ってやる。だから、思いっきりやったらいい。



 う~ん、ガラにもなく青くせぇ話を語っちまったな。忘れてくれ。

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