第七話 当ててみましょう
樹がコンビニから戻ってきたので彼の方へまっしぐらに駆け寄る。
「おかえり~」
「ただいま、ダイスケ」
買ってきた物を冷蔵庫や棚に入れながら、樹は今日は雨が降ったり止んだりだと教えてくれた。
「少しイライラしてる?」
樹はなんとなくいつもと違って見える。
「ダイスケ~、ホントの友達ってなんだろうな」
今日は凹んでる樹の日だ。
他にも陽気な日や怖い日など、色々なバージョンがある。
「僕には難しい話はわからないけど、いつも樹のことを応援してるよ」
それまで僕に背を向けていた樹は振り向くと、ケージの天井にぶら下がっている僕に危ないからやめなと言った。
「食べすぎでお腹が出てきてるぞ~」
そう言うと彼は僕をケージの中からつまみ出し、贅肉や皮をびよ~んと引っ張った。
僕はハムスターの大福。
真っ白でお餅みたいに太っているからと、樹がそう名付けてくれた。
だけど結局彼は僕のことをダイスケと呼ぶし、樹のお父さんはハムちゃんと呼ぶ。
「おいしい?」
今日は僕のためにヒマワリの種やゆで卵を用意してくれた。
「おいしいよ!」
一番のお気に入りを覚えていてくれて嬉しいけれど、樹はなんだか消耗しているように見える。
「・・・。刀哉がさ、認めようとしないんだよね」
恐らく友達の彼女のことを話しているのだが、樹はあまり気に入っていないようだ。
「顔はそこそこなんだけどさぁ、なんていうかあんなお手頃な子じゃなくて、もうちょっとマシな子にすりゃいいのに。」
「応援する気はさらさらなさそうだね・・」
「刀哉にとってすげー有害な気がする。ああいう女って思い込みだけで暴走しそうだし」
ない知恵を絞って考えて出た結論は、たぶん樹はやきもちを焼いているんだということ。
僕にはなんとなくわかるよ。
きっと樹も友達の事をずっと見守っていたから心配なのだろう。
「僕は樹が友達から嫌われるのはイヤだから、彼女の事を受け入れるべきだと思うよ」
樹はしばらくの間沈黙していたが、ハッキリとした声で言った。
「今はムリ」
こじらせております。