第四話 one-way
初めて刀哉くんを電車で見かけたのは一年前、まだ桜の花が満開のときだった。
二つ先の駅に私立の男子校があるということを把握していたが、彼らには私の学校にいる共学の公立校の男の子たちとはまた違った雰囲気があるなと感じていた。
いつもごきげんな様子のお友達の横で、刀哉くんには独特な空気感があって、物静かな人なのだろうなと思った。
二人のお友達は私たちや、他校の女の子を意識してそわそわしてみたり、電車内だというのに話し声がやたらと大きかったりしたが、刀哉くんは低い声とテンションでぼそぼそと話し、女の子のことにはあまり興味がなさそうだった。
背がずば抜けて高いけれど、長い前髪で目がほとんど隠れていて伏し目がちなので、彼の視界に私がうつることは難しそうだった。
だけど刀哉くんと同じ電車に乗れるだけで、それだけで充分だった。
「刀哉と俺は家族みたいなもんだしな~」
刀哉くんの首に腕を回してはしゃぐお友達に、もう一人のお友達が刀哉、わりとどうでもいいって顔してるぞと笑う。
「ねーまったく、冷たいヤツだよ。刀哉くんは」
となりの明るいイケメンくんを突き離すこともしないし、無理をしているようでもないので、きっと本当に気を許しているのだなと思う。
「お前手っ取り早いとこで手打ちすぎなんだよー」
今度は女の子の話に移行したようだ。
「せっかくの好意を無視できないだろー」
刀哉くんの周りのお友達は、二人ともそこそこモテそうに見えるので、なんだかとても華やかに感じる。
「安全牌、安全牌~」
「いやwin winなんだって」
恋愛話で盛り上がるお友達の中で、刀哉くんはどんな顔をしているのだろうかと隙間から盗み見ると、ウトウトと船を漕ぎ始めている。
そんな可愛らしい彼に魅了されながら、彼を独占することができたらなあと徐々に
思うようになった。
一方通行ですね~