第二十一話 いきさつ
「無神経な人ではないよね」
私がそう溜息をつくと、刀哉くんはうん、まあでも樹と一生意気投合することはないと言う。
「彼の末路ってどうなるんだろう・・」
「どうだろうなぁ。なんていうか、俺たちってヤツとはあまりにも違いすぎるよな」
私は頭の中で、みんなちがって、みんないいという詩をぼんやりと呟いていた。
「表の顔はいいヤツなんだけどなぁ」
「樹くんて、刀哉くんや私にああいう発言をして今後の友情にヒビが入ったらどうしようって思わないのかな」
刀哉くんはうーんと考えると、自信があるんじゃないかなと言った。
「一人になっても大丈夫っていう」
「一人で生き抜いていける人なんて私はいないと思う」
刀哉くんは俺もそう思うと同意すると、樹の周りには人を頼ることを教える大人がいなかったのかもなと呟いた。
「そうかもしれないけど、だからって自分以外の他人みんなにイライラされても困っちゃうよ」
そうだなと頷いた後、刀哉くんは今がヤツの変われるチャンスなのかもと言った。
「そうだね、私たち次第で樹くんの未来が決まるかもしれない」
彼を変えることは容易いことではないと思うが、あらゆる手段を試みてみようということになった。
電車の中では読書をするか勉強をすると決めているのだが、今日は早起きがたたってうとうとしてしまった。
「おはよう♪」
私の座席の目の前に立って覗き込んでいるのは、先日電車内で咳をしていた彼だった。
正直また会えるだろうかと期待していたので、驚いたが嬉しさの方が勝っていた。
「お、おはようございます」
彼はにこりと笑うとやっと会えたと言った。
「いくら探してもいないから、急に不登校になっちゃったのかもと思ったよ」
私は探してくれたんですかと驚いた後、少しむすりとしてちょっとしたことで学校を休んだりしませんと言った。
「ははは、メガネちゃんは真面目そうだもんな」
朝から彼の笑顔にどきりとしながら、私は縁なしメガネをくいっと上げた。
「それはあだ名ですか?」
「ごめん、ごめん。S女のメガネちゃん、名前をきいたら教えてくれる?」
彼は相変わらず余裕のある笑顔を見せると、自分は佐久間修、T高の2年ですと名乗った。
彼の名前を反芻すると、彼らしい名前だなと思った。
「えっと、私は竹内稔。S女の1年です」
佐久間くんは笑顔を絶やさないで稔ちゃんかぁ、カワイイ名前だなと頷いた。
「俺は稔ちゃんて呼ぶから、稔ちゃんは修くんね♪」
修くんの背後の陽光が彼をとても爽やかに見せてくる。
「いきなり下の名前ですか?」
戸惑う私に、彼はだって名字だと堅苦しいじゃんとウインクした。
さり気なくウインクをできる人って現実にいるのだなと感心していると、LIMEを交換しようと提案された。
「は、はい」
修くんはやった♪と言って屈託なく笑った。
「稔ちゃんて弟いそうだね」
完全にハズレているので私は苦笑して、いるのは姉ですと言った。
「へ~、いくつ?」
「1つ上です。Ⅿ高の2年」
彼はマジで!?と大げさに驚くと、いいね~姉妹♪とニコニコした。
なんとなく奔放な姉と比べられたらイヤだなと思っていると、表情が少し硬くなってしまったのか、修くんは大丈夫!俺は稔ちゃんにしか興味ないからとさらりと言った。
ものの見事に心をもっていかれてしまった。
それぞれ情熱があります(^^)




