第十七話 見せかけ
「たまにしか会えないんだ」
樹とはどれぐらいの頻度で会っているのかと杏ちゃんが質問してきたので、あたしは正直にそう答えた。
一緒に入ったファストフードで、杏ちゃんはほうじ茶味のタピオカドリンクを頼んだけれど、ほとんどそれには手をつけていない。
「そっか。りりなちゃん、樹くんにもっと会いたいとか言わないの?」
「言わないよ~。会う日とか場所は樹が決めるんだけど、それには逆らえないんだよね」
樹は常に手の届かないところに行ってしまいそうな雰囲気をかもしだしていて、感情の起伏が激しい。
上機嫌だったかと思うと、突如立腹したりと彼の思考回路が全くわからない。
杏ちゃんは幸せが逃げてしまいそうなほど大きなため息をついてりりなちゃんも大変なんだねと言った。
あたしは首をかしげると、様子が変な杏ちゃんに何かあったのかと聞いた。
「ずっと考えたくなかったんだけど、樹くんて私のこと嫌いだよね」
先日4人で帰ったときの、杏ちゃんに対する樹のこれ見よがしな態度を思い返すと、うなずけてしまう。
「あたしは樹に振り回されるの慣れてるんだけど、杏ちゃんたちはきつかったよね」
真顔になった杏ちゃんは正直、樹くんのことが負担になってきてしまったとこぼした。
樹の彼女のあたしに不満をぶつけるのだからよっぽど悩んでいるのだろう。
「刀哉くんは樹くんの本質を理解してるのかな」
先日の杏ちゃんの彼のしらけた顔を思い出したら察しているのだろうなと思う。
「樹とあんまり関わりたくないだろうから、今度から杏ちゃんに樹の行動LIMEで知らせるよ」
それは助かるが、りりなちゃんに迷惑がかからないかと聞いてくるので大丈夫だとあたしはにこりとした。
丸聞こえだぞと思いがなら、りりなと竹内杏の会話を後方の席から耳にしていた。
二人を会わせる前は正直打ち解けるとは思っていなかった。
りりなの好意を無視するのが面倒になって自分の彼女のような扱いをしているけれど、今まで一度だってあいつに魅力を感じたことなどない。
人格が未熟でイライラするし、そろそろ終わらせるかと思っていると、一心不乱にそれを嫌がるりりなを想像できて含み笑いをしてしまう。
「あたしも樹とはもう一緒にいられないかもしれない」
だがいきなり想定外の発言をするりりなに、ウソだろ?と驚愕する。
しかし俺と竹内杏のどちらかを選べと言えば選ばれる自信はある。
「樹みたいな人といるのは限界があるのかも・・・」
そうだねと相槌を打つ竹内杏を不快に思っていると、りりなは続けて俺がりりなのことを信用していないと思うと言った。
確かにあいつのことを頼りにできる存在にカテゴライズしていない。
「だけど樹が精神的に疲れ果ててるときとかはあたしに甘えてくれて、悪い気はしないんだよね」
黙れ、バカ女。
俺は心の中で叫んだ。
俺のことが好きでしょうがなくて頭がおかしくなったのではないかと思った。
二人の会話が面白くなくなってきて、俺はかかっているBGMに集中することにした。
ぼんやりとしながら、万が一りりなが別れ話などを切り出してくる前に手を打つ必要があるなと思った。
りりなちゃんは意外と考えています。




