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第一話 Red Hot!

「彼氏になってもらえますか?」


 夏休みの予定は多ければ多いほど楽しいのだろうなとは思っていたけれど、きっと私のことだから今年もほとんどどこへも行かないうちに秋がやってくるのだろうと予測していた。


 男の人の前では常に借りてきた猫のようになってしまう私が、なぜこんなセリフを言ってしまったのかというと、ちょっとした理由があった。

 いま私を見降ろしている、当惑した表情の彼は、よく見ると頭の左上に妖怪アンテナのような寝癖がついている。


「えっと・・・、名前を聞いてもいいですか?」

 気まずい沈黙がしばらく続いていたのだが、彼がやっと口を開いた。


「あ、えっと・・、竹内杏たけうちあんといいます・・・」

 勢いよく話しかけた割には、私の声の音量は悲しいほど小さい。


 普段着の彼を初めて目にした私は、テンションがマックスになってしまい、まずはお知り合いになるという工程をすっとばして願望を口にしてしまっていた。

 もしも私に時空を移動する能力があるのなら、迷わずおかしなことを口走る前に戻りたい。


 彼をちらりと見ると、私のことを扱いにくそうな人だなという表情で見返してくる。

 この人は数分前まで私の名前すら知らなかったのだが、それに比べて私は彼のことを驚くぐらいたくさん知っている。



 樋口刀哉ひぐちとうや


私の高校と同じ沿線にある私立の男子校に通っていること以外に、早起きがニガテなことや、辛いものもちょっとニガテなこと、友達といるときですらつまらなそうな顔をしていることや、駅で並んでいるときに割りこまれても特に気にもとめない性格であることや、歳の離れた妹さんがいることも。


 ほとんど毎日通学のときに電車が一緒になるので、彼とその数人の友達の会話が自然に耳に入ってくるようになった。

 友達の風夏ふうかちゃんからは毎日盗み聞きごくろうさんと言われているが・・・。


 電車に乗る前に、いつも彼が乗っていてくれたらいいなと思いながら乗車する自分がいる。

 まさか近所の図書館で、意中の彼に偶然会えるとは思っていなかったので、勝負服ではないにしろ、もう少しましな格好をしてくればよかったと後悔した。


 最初が肝心なのに最悪だ。


「その作家の本、俺もちょうど借りてきたところだよ」

 もじもじしていると、気を使って彼の方から話をふってくれた。


「えっ、あ、ホントだ・・」

 嬉しくなって、彼の手にある本のタイトルに目をやった。


「私もそれ借りたことあります!」

 彼のことが好きすぎて、挙動がかなり不審になってしまう。


「そうなんだ。面白かった?」

「へっ!?えっと、すごくよかったです!たしか・・、お金がない人の話です!」

 説明が残念すぎる。


「わかりやすいね・・」

 彼は苦笑すると、パニック寸前な私に優しく連絡先を交換しようと提案してくれた。



 王子様みたいな人だった。









新しいお話です♪

よろしくお願いします(^-^)

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