プロローグ
ラブコメを書こうと試行錯誤してたら、いつの間にかこんなのになっていました。どこで道を踏み外したんだろう……。
でも自分の書きたいように書けたので良しとします!(無理矢理)
野球知らない人も是非読んでみてください!
『女子高生になったら、おしゃれな服を着て、原宿とかでショッピングして、イケメンな彼氏と付き合うんだ~!』
憧れの蒼美高校へ進学が決まった時は、そんな夢見心地なことも言ってたっけ――。
村田優は、春特有の透き通った青空を眺めながら、まるでそれが遠い過去だったかのように、数か月前の自分に思いを馳せる。
純粋無垢だった中学時代の夢は見事成就し、村田優は晴れて女子高生になった……のだが、思い通りになったことと言えばそれくらいである。
自らが置かれているこの状況を中学校時代の彼女が見たら、どう思うだろうか。
きっと、絶望に打ちひしがれるに違いない。
おしゃれな服は、泥にまみれたユニフォームに姿を変え、原宿でショッピングをする代わりに、砂埃の舞う校庭で、ただただ汗を流している。隣を見てもイケメンな彼氏などいるはずもなく、のっぺらぼうの三塁ベースがお出迎えするだけ。
まさに、優が想像していた地獄そのものだった。
額からは、冷や汗とも区別がつかないような嫌な汗が溢れ出る。
入学式のために気合を入れてセットした髪も、今では頬にへばりつくだけの邪魔な存在としか認識することができなかった。
カキーン!!
金属バットの響く音。二度と聞きたくなかったこの音が、敬遠し続けてきたこの音が、自分の耳に幻聴のように纏わりついている。
土の匂い、グローブの温かさ、スパイクが地面を削る音。
悪夢であると現実逃避するにはよく出来すぎている。
そう、これは夢なんかじゃない。現実に起こっている出来事なのだ。
だからこそ――夢じゃないのは分かっているからこそ――ひとこと言わせてほしい……。
優は、ありったけの悲痛に満ちた思いを込めて、叫んだ。
「なんで! 私が! 野球なんてやってんだあああぁぁぁ~~~!!」
校庭の真ん中で、絶望を叫ぶ。
しかし、その悲鳴が神に届くことはない。
彼女――村田優の華々しい女子高生生活の1ページ目は、容赦なく土色に染めあげられた。