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〜紅 朱理の叛逆〜  作者: くしくし
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兆し②

「優しい世界を作る。そんな仕事に就きたいです。」

安奈の声が教室に響く。

まっすぐな瞳が目の前に座る担任を見つめている。

彼女に迷いはないということだ。

本当に優しい世界を作る仕事をしたいと考えているようだ。


「そ、そのような仕事はないんだがね。」

担任も困った顔で安奈に返答し、安奈の隣に座っている蒼助を見た。


「具体的に何かしたいことでもあるのか?」

蒼助が安奈に問いただす。

安奈は隣の蒼助を見て口を開いた。

「戦争を、戦争を終結に導いた方々のような、そんなことがしたいです。」


7年前に起こった戦争。

アメリカ合衆国、朝鮮民主主義人民共和国、ロシア連邦・・・核保有国による核戦争が一部で起きたため、短期間で人口は減少した。

そんな、絶望的な戦争に終止符をうったのが、安奈の言う者たち、

『黒薔薇の騎士団』である。

騎士団の人員構成、どこの国の者なのか、何のために戦争に加入したのかなど

全てにおいて謎の組織である。だが、世間に二つだけ知られていることがある。

1つは、5人のオッドアイの中心人物がいること。

もう1つが、全員服の両肩と背中のマントに黒薔薇の紋章をつけていることである。

そのような組織に安奈は憧れている、なりたいと言っている。


「あ、安奈・・・。それがどんな組織か分かっているのか?あれは人殺しだ。まして、優しい世界とは無縁の存在だ。そんな者に君は・・・。」

言葉を詰まらせる蒼助。

安奈は首を横に振り返答した。

「確かに、彼らのやり方は間違えています。優しい世界とは無縁の存在です。ですが、朱理さんがいた組織でもあります。だからこそ、信じたいのです。黒薔薇の騎士団がやろうとしたことは、本当は、優しい世界を作ろうとしたんじゃないかって。だから・・・」

朱理の名前を聞いた途端、顔を強ばらせ動揺する蒼助。顔色も青白くなっている。


「あのー。朱理さんとは?それにお知り合いがあのような組織にいるんですか?」

動揺、そして恐怖を感じている担任が蒼助、安奈に対し質問を投げかけた。

黒薔薇の騎士団は、今や世界中に指名手配されている組織である。

彼らは、戦争時各国の役員、重鎮を殺害した。

また、目撃者によると、彼らは特殊な能力を使って殺害したとも言われている。

そのような者たちを各国は野放しにするわけにはいかない。

そのため、戦争はすぐに終結し、世界の国々は手を取り合い、技術革新及び黒薔薇の騎士団の確保のため、手を取り合ったのだ。


「た、確かに知り合いがいました。でも、彼女はその、5年前に私の目の前で亡くなりました。だから、もう関係ありません。」

担任から疑心な目で見られたため、すぐさま作り笑顔でフォローする蒼助。


「ならばいいんですが・・。もし、わが校にそのような犯罪組織と繋がっている者がいると分かれば、それすなわち、学園の存続が危ぶまれますので。発言には気をつけてください。」

厳しい口調で蒼助と安奈を律する安奈の担任。

安奈も自身の発言の軽薄さを自覚したのか、担任の言葉に素直にうなずき頭を下げ謝った。


誰も声を発することなく、空気が重くなった三者面談。

担任は蒼助を、安奈も蒼助をチラチラ見ている。

蒼助はそんな視線に感化され、しぶしぶ口を開いた。

「あの、その、安奈には私からちゃんとした職に就くよう言っておきますので・・」

「・・わかりました。では、これで面談は終了とします。」


担任は不服そうな顔をしながらも、しぶしぶ蒼助の言葉を受け入れ、面談は終了した。


――

――――

――――――

面談が終わり、帰路につく安奈と蒼助。

面談が終わってかれこれ10分。お互い一言も話さず、隣同士歩いている。

蒼助はチラチラ妹も顔色を伺う。

「(明らかに、機嫌悪いよな。。。)」


そんなことを考えながら歩いていると、不意に安奈が足を止めた。

それに気づいた蒼助も安奈より3歩ほど前で止まり振り向いた。

安奈はまっすぐ蒼助の目を見ている。蒼助もまた、安奈の目をじっと見つめている。

それから、数行後に安奈がゆっくり口を開いた。

「騎士団に入団することをお兄ちゃんは、反対するのですか?」


安奈からのそのことを聞かれることを蒼助は分かっていた。だからこそ、蒼助もゆっくり口をあけた。

「朱理の・・・姉の意思を継ぐつもりなんだな、安奈。」


蒼助の言葉に対し、「うん」と大きくうなずいた安奈。

蒼助には分かっていた。

5年前から安奈が、紅 朱理の意思を継ごうとしていることを知っていた。

でもだからこそ、蒼助にも意地があった。

「それは、許さない」

「どうして?!」

いつも以上に大きな声をあげる安奈。

安奈は基本おとなしい子である。それ故、家や友達といるときに大きな声を出すことはない。

そんな彼女が、感情を表に出し、声を荒げている。

それだけ、彼女にとって大事なことなのである。


「どうしてよ!答えてお兄ちゃん!!」


蒼助は、数秒黙り、そして返答した。


「朱理との約束だからだ」



誤字脱字は適宜、修正します。

ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。

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