序章
2040年、3月15日 午後11時。
その日は天気が悪く、大雨が降っており、雷がところかしこで鳴り響いていた。
「・・・蒼助お兄、ちゃん。」
綺麗なセミロングの黒髪を雨にうたせながら、10歳程の少女は5つ年上の男、蒼助の腰に顔を埋め、今にも泣きそうな顔をこらえながら、必死に声をだした。
「私は、これか、らどこにいく、の。」
少女の悲しそうな質問に対し、男は必死に笑みを浮かべ答えた。
「安奈ちゃん。これからは、僕たち2人で生きていこう。朱理の分まで、僕たちが!」
蒼助は答えると、安奈の手を引き、闇の中を歩いて行った。
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2045年、4月18日 午前10時。
世界の人口が減少の一途をたどり始め約30年。
今では世界の総人口は30億人にまで減少した。
僕のいる日本でも同じく人口は減少し、他国の移民を多く取り入れることでどうにか成り立っている状態だ。
人口減少に歯止めをかけようと、世界中の国々が技術革新、とりわけ〈長寿命〉の薬の開発に力を入れている。
日本も技術革新に躍起になっている国の1つだが、日本は〈長寿命〉ではなく、〈食料の無限増産〉に力を入れている。
移民の受け入れを積極的に行うことで国として、どうにか成り立ってるが、島国ということ、そして他国のとの貿易が減ったことによる食料不足が最も懸念されているのだ。
そして何より、この30年程で人口が半数以下にまで減った最たる要因、それが、第三次世界大戦である。
大戦が始まった理由はいたってシンプルだ。
いつの世も世界を我が物としたいと願うものがでてくる。そうして大方、その者は世界を荒らすだけ荒らし死す。
そう。この物語は世界大戦の末、人口減少に歯止めが効かない世界で、日本を、世界を相手に戦いを挑む暁蒼助の物語である。