大切なのは思いやり
手を弾かれた訳だが、これはあれか所謂ツンデレと言うものだろうか。
ツンデレと言うのは素直になれない女の子がそう言う態度をとってしまうらしいし、きっとこのリビングアーマーも俺が急に話しかけてきたから驚いちゃってあんな態度をとってしまったに違いない!
「えーと、自己紹介とか出来るかな?」
「私に話しかけるなと言った筈だぞ人間、その程度も分からぬほど知性が乏しい様だな」
「……」
「……」
スゴい腹立つんだが、どう始末したものか。
「ここはユキムラ……いやミストにでも頼むか」
「クロト、何考えてるの?」
「粗大ゴミの片付けかな?」
「止めてあげて!?」
ええい放せ! こいつはダメだ、絶対仲良く出来ねぇ!
◇◇◇
ラビィとの格闘戦は熾烈を極めた、どちらとも運動不足による体力低下でそもそも大した事のない身体能力同士で争うものなら決着が全く付かなかった、だが俺の最下級闇魔法【暗転】と最下級光魔法【提灯】の目潰しコンボで勝利を手にした。
下らないとか思うんじゃねぇぞ、こちとらゴブリンにも手こずるんだから。
「はぁ、はぁ、ラビィこいつ俺の話し聞かなさそうだから紹介してくれ」
「ふぅ、ふぅ、わ、分かった」
お互いに呼吸を整えるまで休憩し話を戻す。
「紹介するよクロト! 私が召喚したリビングアーマーのリビちゃんだよ!」
「ラビィ様リビちゃんはお止めください」
俺にバレないようにと召喚したあとダンジョンの外でこっそりと強化していき、満を持して今回その猛威を振るったリビングアーマーことリビちゃんだが、どうやらラビィには懐いているらしい。
「なるほどリビちゃんか、ヨロシクな」
「黙れ、矮小なゴミが」
俺に手厳しいぞコイツ……。俺は罵倒に興奮を覚える類いの人間じゃないんだけどな。
抑えろ俺、このクソ鎧……リビちゃんは人見知りなんだ。きっと他人とのコミュニケーションに自信がないからこの態度だ、そう思うしかない。
ラビィに懐いているのは恐らく鳥類が卵から孵る時に最初に見たものを親と認識する刷り込みの様なものかもれない。
「ま、まぁ同じダンジョンの仲間なんだし温厚に行こう。な?」
「何故私が貴様ごときと友好的に接しなければならない。寝言は寝て言え」
「……」
これは仕方ない、ラビィにだけ懐いているんだ心を開くにはまだ早い。出会ってすぐに仲良くなれるならこの世にボッチはいないのだから。
当然だがそれにも限度や限界と言うものがあるわけで……。
「ミスト呼ぶか」
「クロト待って!?」
◇◇◇
本日2度目の死闘を繰り広げた結果、ラビィが全面的に面倒を見ることになった。当然である。
「リビちゃんはまだ誰にも紹介してないし私にしか懐いてくれないのが困るんだけどさ。皆と仲良くしたら?」
「いえ、結構。私はラビィ様をお守りする為に喚ばれた存在、協力はすれども仲良くするつもりはございません」
「ツンデレだぁ」
俺がちょいちょい出して読んでる漫画があるのだが、ラビィも暇潰しに読んでいるのである程度そういうネタ的なものを理解している。残念な脳みそだ。
「クロトはこのダンジョンのマスターだよ? これでも私のご主人ではあるんだから仲良くしなよ」
おいラビィ、これでもってなんだ。
人をポンコツ扱いしやがって、こちとら真面目にダンジョンマスターしてるんだぞ。
「断固拒否します。例えラビィ様の命令であろうともこの男とだけは仲良くはしません」
「なんで?」
「気味が悪い」
変な奴扱いですよ奥さん、反抗期の子供はこれだから……誰が変な奴だコラァ!
「何故でしょうね、この男は異質……相容れてはいけないと感じます」
「でももうダンジョンの支配下なんだし無理だと思うから諦めたら?」
「極力関わりません、ラビィ様をお守りするのが役目ですので」
「喚んだ時もそうだけどリビちゃん変わってるよね」
ん?喚び出したときにどんな背景があったんだ?まぁ良いかな、それはまた今度だ。
「ラビィ、リビちゃんにはお礼を言っておいてくれ」
「クロトから言わないの?」
「お前は今までで何を見てたんだ」
どう考えても悪手だろそれ。
ともあれラビィが謎のリビングアーマーことリビちゃんを相手しているうちに迷宮エリアの修復作業だ。
破壊された壁なんかは勝手に直るから良いが、被害を受けた場所もそこそこにある。
例えば隠し扉の向こうに設置してた結構なお値段の宝箱とお宝とか……ダメになってら、許すまじリビングアーマー。
心のなかで始末計画(仮)を組み立てつつも作業に励む。
「……」
「……」
修復作業は割りと早めに進んでいる。もう2、30分位で終わるだろうし、時間的にはもう夜になるかな? 夕御飯なに食べよう。
「……」
「……」
冒険者が侵入してきて対処するまでにかかった時間はおよそ1日位だ。今現在階層が浅いからその程度の時間しか食わないが今後階層も罠の難易度も上げていかなければならなくなるかもしれないし何日も侵入者が滞在するかもな。寝れるのだろうか。
「おい、何か用か?」
「貴様を監視しているだけだ、黙って続けろ」
「俺は犯罪を犯した囚人か何かかよ」
俺が修復作業を開始してから数十分、ラビィは疲れたのかその辺で寝転がって鼻提灯作っている。
そして、そうなると必然的にリビちゃんと2人きりという最高に落ち着かないシチュエーションになるわけで。
質問に答えてくれる訳でもなし、放置が1番だろう。さっさと帰って飯食って寝よう。
それにしても監視……監視ねぇ。
一体何の監視なんだか分かりゃしないな。
その監視結果を誰に渡す訳でもないし、裏に誰かがいるなんてこともないだろうに、何の意味があるんだか。
まぁ性格は騎士って感じだし生真面目なのかもしれない、喚び出されて誰とも接してないってラビィが言ってたし警戒中なんだろうな、他所から借りた猫みたいな感じだろう。気にするだけ無駄だな。
喚び出したのがラビィで世話をしたのがラビィだから懐くって言うのは当たり前か。それにしても気味が悪いって言われたのは傷つく。
「よし、これで終わりだな。ラビィ、終わったし帰るぞ」
「んむぅ……まだ眠い……」
「風邪引くでしょうが!さっさと起きないとご飯抜きだぞ!」
「起きてる起きてる!ご飯はシチューが良いな!」
「現金過ぎるだろ……」
よし、夕飯はビーフシチューにしてやろう。 ラビィ曰くカレーにしか見えないそうだ。
シチューにはシチューの良さがあるが俺はビーフシチュー派なので夕飯は誰がなんと言おうとビーフシチュー。
「じゃあリビちゃん、私は用事が出来たから帰るよ。また来るね」
「畏まりました。おいゴミ、ラビィ様にてを出すんじゃないぞ、出したなら殺す」
え、めっちゃ怖いんですけど。
「大丈夫だ、殺されたくないし手なんか出さねぇって」
出したところで待ってるのは絶壁だ、引っ掛かりのない壁は誰も登れないのだから。
「さてビーフシチュービーフシチュー」
「シチューだよね?シチューだよね!?」
喧しいラビィと共に帰る瞬間、警戒音が鳴り響く。
──ブゥーワンッブゥーワンッ!
──ツクツクホーシツクツクホーシ!
「いやコレ毎回どうなってんの!?」
アホみたいな警戒音がアナウンスされるが侵入者が現れたと言うことだろう、まさかあの冒険者どもが?戻ってくるとは言ってたが速すぎないか!?
俺とラビィは急いでマスタールームに戻り、モニターを確認する。
──侵入者の数、凡そ100。
そんなバカな、どうやってこの短時間で人数を集めた!? 【転移】のマジックスクロールをまた使用したのだろうか、それならあり得る。
一体どんな冒険者が来やがった……
「オヤビーーーン!!! 仲間を集めて来ましたぜ、どうか俺達を仲間に入れてくだせぇええ!」
「は?」
いつぞやのコボルトどもが現れた。




