リザルト
「え、冗談だろ?」
3人にまで追い込んだ冒険者パーティーはリビングアーマーのクソでかい隙を利用し、懐から何か取り出したと思えば次の瞬間、眩い光と共に消えた。
最後の撤退すると言いかけていたがてっきり何とかして上の階層に逃げるものだと思い込んでいた。
それがまさかそういう方法で逃げるとは……あれは何だ? 一瞬でこのダンジョンから消えたと言うことは恐らく、いや絶対に【転移】の魔法を使いやがった!
「逃げられちゃったよ、クロトどうするの!?」
マジでか、あの魔法使いは確かに腕前はあの中ではある方だが使っていた魔法から察するに最上級よりも上、王級魔法であるはずの【転移】を使えるのか? どういう理屈だ?
いや、モニター越しに見える魔力の量ではあれを発動するほどの魔力はなかった、恐らくは実力も足りていない筈だ……いったいどうやって。
「【マジックスクロール】か……」
確かカタログにも記載されてたスキルや魔法が1度だけ使えると言う使い捨てのアイテムだったな……DPが恐ろしく高い上に1度しか使えないとなるとダンジョン的には相性が良くないから見向きもしなかったが、なるほど冒険者にとっては生命線にもなるのか。
「してやられたな」
「ねぇーどうするのー?」
おっと、考えに夢中でラビィの事をすっかり忘れてた。
「どうするもこうするも無いんだよな、逃げられた以上追うことは無理だと思う」
転移を使ったと言うことはイメージ的にダンジョンの外に逃げたとは考えられない、恐らくはマルタの街位までは逃げる事が出来ているだろう。
まいったな……これはつまりもっと強い冒険者がやってくる事になりそうだ。
「まともにダンジョンするのはメリットが薄いから大人しくしておこうと思ったんだけどな……こりゃ嫌な予感がする」
「……私が逃がしたからだね」
「いや、転移を持ってたってことは遅かれ早かれ逃げられてた。ラビィが気にする程の事じゃない」
向こうが転移を持っているって知ってたら森林エリアで潰したものだが……過ぎたことは仕方ない、次に活かそう。
「多分だが冒険者は本格的に攻略に来ると思う。それまでにダンジョンをちゃんと作っていこう、働いて貰うからなラビィ」
「もちろん! 出来ることは任せておいて!」
それに6人は減らす事に成功しているのだ、リビングアーマーの能力も捨てたものではない。むしろ大きな戦力となったわけだしラビィを誉めるにしろ責め立てることは出来ない。
無断でDPを使ったことに関してだが、小遣いを貯めれば好きにして良いとも言った覚えがあるしこの件に関しては流すことにしよう。
何せリビングアーマーがいなければホブゴブリンやオーク達が必然的に戦う訳で、もしかすると多少被害がこちらにも出ていたかもしれない。
追い込んだとしてもさっきの転移を使って逃げられてしまえばこちらの士気は下がる一方だし、もしかすると全員がダンジョンから居なくなる可能性も高い。
せめて俺たちが召喚した魔物で運営が回るくらいまでは協力して欲しいところだしな、今のところ族長達抜きで回る目処は一切立ってないけど……。
そもそも基本的にダンジョンを回すには必然的に冒険者を呼び込まないといけないし危険度が高いからやりたくは無いんだよな。そんなことにならないように気を付けよう。
「よし、ひとまず侵入者がいなくなった事を伝えておくか」
◇◇◇
「まさかあそこまで怒られるとは……」
「活躍も出番もなかったもんね」
手始めにホブゴブリン、オーク達にに知らせるとやれ「どうして呼ばなかったのか」だの「実力を見せる時じゃないのか!?」等と言われてしまいました。
族長達はまだ良い方だ、ゾンビ達も別に気にはしてないと言われ内心ホッとした。
だがゾンビはゾンビでもあの3人、特にうちの最高戦力はかなりご立腹だった。
「敵が逃げた? それは大きな失態では?」
と左分けインテリイケメンに愚痴を溢され
「出番……いつ」
と影が薄い右分けイケメンの哀愁漂う雰囲気に心を痛めた。
そこまではまだ可愛い方だ、この次がヤバかった。
「クロトさ、僕を楽しませるって約束はどうしたのさ!待っても待っても敵は来ないし来てもここまで来ないんじゃ意味ないじゃないか!」
非常にごもっともな事を言われてしまい30分程正座させられお説教されたのだ、それもゾンビトップスリーにだ。
スゴいぞ、勢いに乗せた言葉のラッシュに所々痛いところをネチネチ着いてくるローキックと抉るかの様な殺傷力を持ったアッパーやストレートは確実に俺をノックアウトさせたからな。
全面的に俺が悪いとは思うがあまりにもしつこいのでトランプでボコボコにして煽ってやった。バカめ、イカサマはバレなきゃ合法なんだよ。ダンジョンでは俺がルールだ。
それからラビィの召喚したと言うリビングアーマーの迷宮エリアにやって来た。
所々壁や床が破壊されており見るも無惨で迷宮と言うか一本道になってしまっている、暴れすぎだろ畜生。
「……待てよ、これ危なくないか。どこにあったっけ!?」
「クロト、どうしたの待ってよ!」
ヤバいヤバい、完全に忘れてた! 後ろからラビィの声が聞こえるがそれどころではない! 何の異常もないがひょっとしたらひょっとする可能性は拭いきれないからな!
「はぁ、はぁ、脇腹痛ぇや。あった」
「ふぅ、ふぅ、脇腹痛いよぉクロトどうしたのぉ」
「運動不足とは情けないなラビィよ」
「クロトが言っちゃダメだと思うよ?」
「ぐうの音も出ねぇや」
互いに脇腹を抱えつつ軽い言い合いをしていると目的の場所に着いた。
「良かった、コアは無事だ」
淡い青に光っている浮遊物であるそれを抱える、このダンジョンの要であり生命線であるダンジョンコア。
どうやらリビングアーマーが大暴れの被害はここまでは届いていなかったみたいだな。
「ふぅ、これは移動させなきゃダメだな」
「あー、ダンジョンコアね。覚えてた覚えてた」
絶対嘘だろ。
「一応これ壊れたらお前も死ぬことは忘れてないだろうな?」
「ちょっとクロト! こんな危険な場所になんで置いてるの!?」
危険な場所に変えたのはお前だろうに。
隠し部屋として設置した絶対見つからない場所にダンジョンコアを置いていたのに届くギリギリまで暴れまわる破壊者喚び出しやがって。
そうこうしていると当の破壊者ご本人がガチャガチャと鎧の音を響かせ薄暗い通路からやってくる。
こうしてみると威圧感がスゴいんだよなぁ。
背丈は2メートルを越え重厚感溢れる漆黒の全身鎧。一見愚鈍そうに見えて背中に担いでいる大剣を軽々と振り回し縦横無尽にその場を駆けると言う理不尽を絵に描いたような魔物だ。ミストとどっちが強いかなと思ったのは内緒だ。
「…………」
さて、そんなリビングアーマーだが何だろう……ファーストコンタクトをミスったら俺の首が飛んでしまいそうな雰囲気を漂わせている。
いや、ダンジョン支配下に収まっているのだから俺に攻撃は出来ない筈……大丈夫だよね? 行くよ?
「あー、俺はダンジョンマスターのクロトだ。今回は冒険者の排除は助かった。ありがとう」
これで良いだろうか、取り敢えずは握手しておこうと思い手を差し出すと思いっきり弾かれた。
「え?」
巨体から繰り出されるその威力は、握手を拒む軽いものであろうともかなりの力強さを持っており顔がひきつる位には痛い。
「私に話しかけるな木っ端が!!」
あー、また面倒臭そうなのが増えたな。
誤字脱字ありましたらよろしくです。
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