私に任せて!
冒険者達は驚き戸惑う。
協調性の無さから独断専行していった『虎狼の戦斧』の姿が消えた事に。
確かにその素行の悪さから冷たい目で見られがちの『虎狼の戦斧』だが実力は折り紙つきであり、囮に使いはしたもののそう易々と殺られると言うことは想定しておらずむしろ来る魔物を蹴散らしてくれるものだとばかり考えていた。
もちろん少しでも楽をしようと言う気はありはしたものの、戦略性はともかくその実力は他も認めるほどである彼らは遊ばせるよりもガンガンと先に進ませる方が有用な使い方であった。
見失わない程度に距離を離しつつしっかりと後を着いてきた筈であったが思わぬ襲撃にあい気がつけば『虎狼の戦斧』の姿は声だけを残しその姿を眩ませた。
「まさか殺られたのか?」
「考えたくはないが、それを前提に動いた方が良いかも知れないな」
「叫び声が聞こえたあと不自然に静かになりましたし」
「……気を抜かないようにな」
◇◇◇
「下の階段見つけたっぽいねー」
「だから何でこうもあっさりバレるんだよ」
こっちが見事に隠していると言うのにあの盗賊野郎……ギンだったな、とにかくこいつが悉く見つけ出してはすぐに奴らが降りていくのだ。
おまけに仲間には見えていないが階段を発見したときのドヤ顔がスッゴいムカつく。あいつは絶対に性格がひねくれてると見た。そうにちがいない、そうであれ。
人と喋るときはおどおどしやがる割にはダンジョンの考察なんかは割りと鋭い……は、もしや俺のダンジョンって在り来たりなのだろうか。うーむ、色々と改造するか階層を増やすか……これは後回しにしようまずはコイツらを何とかするとしよう。
「階段の位置は後で変えるとして、次は迷宮エリアだな」
入り組んでいて落とし穴や隠し部屋、さらには魔物も徘徊すると言う今現在俺のダンジョンで1番攻略に時間がかかるエリアだろう。
いるのは十勇士の部下スライム達総勢50、滅茶苦茶多いなと思ったので実際にはその半分くらいしかいない。残りは村エリアなどで待機してもらっており、迷宮エリアとのローテーションで代わりばんこしているらしいが姿に違いが分からないので分かるふりだけはしている。
このスライム達も一般的なホブゴブリン達と同じくらいの戦闘力を有しているらしく、ゴブリン程度なら瞬殺するみたいだ。
ここで疑問に思ったのが思ったよりも戦闘力の伸びは良くないと言うところだ。十勇士達と同じ訓練をしている筈なのだが十勇士よりも遥かに劣る様で、それが謎なのだ。
違いと言えば名前の有無くらいのものだが、それが関係してるのか? 何で名前で性能が変わるんだよ意味分からねぇ。
「ねぇクロト、ここは私に任せてよ!」
「はい?」
いつになくラビィかやる気ではないか、久しぶりに冒険者がやって来たお陰でテンションが上がっているのだろうか、何とはた迷惑な。
ここでラビィのやる気を無下にすると後々面倒臭そうだし、ラグイの出来ることなんてたかがが知れてる。冒険者達へのボーナスタイムにでもしておこう。
「わかった、任せる。俺は何を手伝えば良い?」
「クロトにはね、私に魔物の使役権を与えて欲しいな」
使役権とは、読んで字のごとく魔物の使役を可能とする権限の1つだ。簡単に言うと魔物に命令を与える事が出来る能力だな。
ポケットサイズに収まるモンスターのバトルのように「○○をしろ!」と言う指令を出せる権限だ。
その歩かにもまるでゲームのように魔物自身を自分の意思で動かす事の出来る使役もあるぞ。
冒険者パーティーを1つ潰したときの木の動き、あれは一部はラビィに任せていたりする。後は命令だ。
ただし、この権限はダンジョンでDPを使って召喚した魔物に限られており、つまりはユキムラ及び十勇士も対象になるのだがそこだけは止めておいた。
自分の意思じゃないのに動かされるって嫌だと思うし、何よりやりたくないって思ったからだ。
とまあそんな話は良いとして重点に1度だけやる気を出す(偏見)の自称美少女ラビィちゃんに使役権を一時的に譲渡しておこう。
マスター権限も譲渡出来ないだろうか……お兄さんちょっと自由に旅がしたいよ、え、ダメ? さいですか。
「良く良く考えたらラビィにダンジョン任せたら2秒で崩壊しそうだしな」
「いきなり酷くない!?」
「ほれ、冒険者来るぞ」
もたもたするな、3分で支度しな!
◇◇◇
冒険者達が階段を下った先にあったのは大量の仕切りの様になっている壁であった。
その1つを覗くとまるでこちらに来いと言わんばかりに道が続いている。そんなものが数十は存在し冒険者達は未だ入り口で策を練っていた。
「おいドウ、これどっちに行くよ?」
「キン、少しは自分で考えてみろよ。リーダーだろうが」
「あれ、そうだったか? いつもお前が仕切ってるしな、忘れてた」
「はぁ……」
「ともあれ、闇雲に進むのは危険ですよ兄さん。ちゃんと考えましょう」
頭を使うのが割りと苦手と言うか面倒だからあんまり考えることはしないキンのぼやき。
「けどよ、進んで見ねぇと分からねぇだろ? ここで待ってても答えなんぞ出ねぇぞ?」
「キンさんの言う通りだとおもうぜ、いっそ手分けして捜索してみるか? 少しずつ進んで戻ってくるを繰り返すとか」
パーティーに参加している冒険者の一人が提案する。
「それも良いかもしれないが時間がかかる、どのくらいの広さなのか分からない上に迷宮がここだけとは限らないからな、下手すれば何日もかかるぞ」
「そもそも迷宮だと時間は食うだろ? じゃあ、全員で1つずつしらみ潰しするしかねぇよ」
「……わかった。そうしよう、いつまでも考えてても仕方ないからな」
「うし、そうと決まれば行くぞ皆! まずは右の道から……落とし穴ぁぁあ!?」
意気揚々と先行していったキンだが歩いてすぐの所で地面が開き、危うくリタイアするところであった。
「兄さん、僕が先行するので後ろの警戒お願いします」
「お、おう、わかった」
「お前は見直したと思えばすぐにマイナスまで持っていくな」
「面目ねぇ」
◇◇◇
「敵です!」
「げっ、スライムかよ!」
「油断するなよ!」
「了解!」
迷宮を進めば罠が当然のように仕掛けられていだ。それをかわしながら進むも迷宮には当然魔物だって存在している。なぜなら迷宮である以前にダンジョンなのだから。
「すばしっこいな!」
「不意打ちに気を付けろ、実力はそこまで大した事はない!」
たった5匹程度のスライムだが、平原などで初心者冒険者にだろうと瞬殺される程度の存在のはずが、異様にとれた連携でベテランとも謂われる冒険者達を翻弄していく。
縦横無尽臨機応変に戦いかたを変え、まさに全力で侵入者の首をとろうと言わんばかりの勢いである。
「確かに早いけどよ、攻撃が単調だな。ドウ!」
「任せろ、【暴風壁】!」
同じ中級風魔法ではあるが消費する魔力が段違いに多く更には自分を中心としてとてつもない威力の風の防壁を張れるが味方には一切防御が適応されず、自分以外にはなんのメリットもない魔法を繰り出す。
強風に煽られた『黄金比率』以外のメンバーは尻餅を着いたり飛ばされたりなどされており、ドウに向かって叫ぶがその声は風によって届きはしない。
「よし、十分だ。どりゃぁぁぁぁ!」
その魔法が発動されたのは襲いかかるスライムがさながらピンボールの様に壁を天井を床を跳ね回り一斉に冒険者へと殺到するために宙に浮いた瞬間だ。
体の軽いスライム達はあっけなく暴風の餌食になり、抗うこともできずに宙へ投げ出される。そこへ渾身の意地で押し寄せる風を踏ん張りバランスを保ちながらキンはその手に握るロングソードを的確にスライム達に当て、撃退に成功する。
あくまでも無理矢理体を動かしたに過ぎない芸当なので、決定だには成らずスライム達に打ち身したものの逃げられてしまう。
「おい、やるならやるって言えよな!」
「あ、わりぃ。ついパーティーでやってるって勘違いした」
『黄金比率』は突発的な戦闘手段をとることも多く、その突発的な戦闘手段は全てキンの無茶苦茶な発想によるものでありこれに付き合わされるドウとギンはすっかり馴れてしまっており、つい癖で他を巻き込んでしまったのだ。
「とりあえずスライムがまた現れたらやると思っててくれ」
「そう乱発は出来ないぞ、魔力の消費がばかにならないからな」
探索を続けた冒険者達は開けた場所へとたどり着いた。
「迷宮ってこんなんだっけか?」
「そんなわけ無いだろう。進んだ距離的に中間地点とでも言う所だろう」
「これ、休憩できるのかね?」
広間は現在6人のパーティーがそれぞれが大分感覚をとっても十分すぎるほど広く、さらに見渡せば至るところに迷宮の続きと言わんばかりに道が枝のように分かれて続いている。
「ひとまず休憩しておくか?」
「そうだな、魔力も回復させておきたい」
「見張りは代わりながらやりましょう」
それから小一時間程の間、小休憩を挟んだ冒険者達は腰を持ち上げる。
「よし、魔力も十分だ。進むぞ」
「おうよ、飯も食ったし元気だぜ」
「食糧全部食べないでくださいよ……ん?」
「どうした、ギン」
「何か来ます!」
ギンの呼び掛けと同時に冒険者達の向かい側の壁が勢い良く破壊される。
「なんだ、あれ?」
大量の砂煙が撒き散らされ、黒い影がその奥から覗き、紅い瞳だけが砂煙の中からこちらを見通す。
その煙が晴れた後、そこに現れたのは黒い鎧を来た存在だった。
誤字、脱字ありましたらよろしくお願いいたします。
また、矛盾点や質問なども受け付けておりますゆえどんどんかもーん




