奇襲してみた
どうよ、この早さ(言うほどでもない)
冒険者達の実力は実は見た目以上にショボい……なんて事もなく普通にランク相応に強いっぽい。
「あちゃー、1層があっさり突破されちゃったねー」
冒険者達はなんの危なげもなく、第1層の森林エリアを突破し下に続く階段を下りている最中だ。
ダンジョンに入った瞬間から始まる第1層の森林エリアだが下の階層に降りるための階段は見つけにくい様にしているとは言え、こうもあっさりと突破されるのは割りと困る。もう少し迷えや。
「でも魔物や罠の類いはあまり置いてないしな、あると言ってもホブゴブリン達に作らせた奴だけからな」
残念なことにその罠はオーク達との戦いにリサイクルされこの層は殆ど放置状態でした。階層増やすこととかに頭使いすぎて足元見てなかったな、灯台もと暗しって奴だ。
それに魔物だが、確か砂を放逐していた気がするがぶっちゃけそこまで戦力になる奴ではないし足もそこまで早い訳じゃないからなもうあれだ家に出てくるトカゲみたいな扱いだ。
特に邪魔をしているわけでもなくそこに存在しているだけの生き物、それが砂である。あれって進化するのだろうか。
せめて何かちょっかいを出してくれれば嬉しい誤算ではあるが、そう漫画のように都合よく行くほど世の中は甘くない。
別段砂の事は半分以上忘れていたのできっと何時の日か役に立ってくれることを願おう。
「クロトー、この後はどうするの? 族長達に任せるの?」
「それも良いがそれは村エリアまでたどり着けたらの話しだな、まだまだギミックは残ってるし丁度良いからこいつらで試していこう」
こういう時のために色々と準備を俺個人で行ってきたのだ、それをせずに仲間に敵の撃退を頼むことなど誰が出来る。
俺の直接的な配下であるユキムラや十勇士を使うならいざ知らず、ホブゴブリンやオーク、ミスト達アンデットは配下と言う扱いではない、あくまでもダンジョンに協力して欲しいと言う謂わば同盟の様なものだと俺は考えている。
感覚で言えば仲の良い仕事仲間だとか、隣の部屋に住む良き隣人だとかそう思っている訳で、部屋に出たゴキブリを倒すのにわざわざ隣の部屋に駆け込む奴はいないだろう、居ればそれはラブコメの始まりなので末永くお幸せに。
ともあれ第1層は簡単過ぎた様だが、これはほんの冗談であり布石である。
冒険者にとってダンジョンとはスリルとロマンを求める場所だ、本当にそうかは知らないがそんなものだろう。
いつ何時魔物に襲われるか、罠に引っ掛かってしまうかと神経を張り詰めなければダンジョンはまともに歩くことは出来ないだろう。
そんな奴が居れば恐らくはお上りさんか初心者位だと思うし、今やって来ている冒険者達の厳つそうな顔を見る限り素人は混ざっていなさそうだ。
さて、そろそろ動くかもな。
『 おいドウ、お前達のときもすんなり行けたのか?』
簡単に行きすぎて不信に思った奴がいるようだ。
ふむふむ、どうやらあのときの考察っぽいな。
要約すると俺達ダンジョン側に戦力がなくて現時点で最高戦力のちょっと強いスライムで奇襲して強キャラ感を出した演技であると結論付けたようだ。
殆ど間違ってないのが悔しいが、残念なことにその時のスライムはサスケが混じっていた意外はただのスライムだ。
一先ず油断はしないようにして先に進むことにしたらしいが、それはいつまで持つかな?
◇◇◇
もう1つの森林エリアを冒険者達が歩いているときにそれは起こる。
冒険者パーティーの内の1つが単独行動を開始してしまうようだ。
我慢の限界が来たみたいだな、順調だ。見た目は中々に厳つい奴だな、目の前に来られたらチビってしまいそうだ。
どうやら彼らは傭兵崩れらしく、あまり人徳は無さそうだな悪意増し増しのアスカの様だが、あれは無自覚なのであれの方が達が悪いと思う。
話が逸れたな。
「ラビィ、ターゲットはあのハゲだ」
「オッケー! いつ仕掛けようか?」
「それはもう少しだな、まだまだ油断しきってない」
検証その1、冒険者の集中力はどれほどまで続くのかだ。
これは何も起こらない、ただ進むだけの場所ならばいつまで警戒できるか、そして警戒を解いてしまえばそこで仕掛けるつもりだ。
「あいつらあのハゲ達を囮にするみたいだな」
「ホントだ、ギリギリの距離だね。警戒されるんじゃない?」
ハゲ達が無警戒に通った道をかなり距離を離して置いていかれた冒険者達が歩いている。これはあのハゲ達がアホなだけだろう。
厄介なのは後ろに着いてきている冒険者達だな。ひとえに邪魔だ。
こちらから仕掛けるにしても目撃されていては対処されるだろうしどうしたものか……。
「ん? マップに何か……冒険者達に近付いてる?」
ゆっくりとだが、確実に近づくそれは独断で先行している冒険者の後ろにいるまともであろう冒険者達の後ろから接近しているのだ。
「あ、あれって砂じゃない?」
「確かに、階層を降りて少し先の所だし可能性はあるな、でも何でだ?」
砂の行動からして恐らく1層で冒険者を見つけ追いかけていたら2層目にまで入ってしまったと言う所だろうか。
つまりは侵入者を対処しようとしたわけだ……この子、凄い良い子なのでは?
せっかく砂がやる気を出しているのだ、それを利用させて貰おう。
「恐らくそろそろ砂が冒険者達の邪魔をする、その間に先行している冒険者達を潰すぞ」
「おーけー!」
◇◇◇
ハゲ率いる冒険者達が何やらストレス耐性は低いようで、手当たり次第に木を薙ぎ倒し枝をへし折っている。うわぁ、あんなの受け止めきれねぇわ……瞬殺される自信がある。
だがこれ以上は見過ごせないな、その薙ぎ倒している木は俺が魔物化させた苦労の証だぞ、何してくれてんだ!
「クロト、砂が奇襲かけたよ!」
「よし、戸惑っている隙に行動するぞ!」
モニターを見れば後ろから現れた大量の砂に覆い被さられ驚く冒険者。
そんな慌てふためく冒険者達を横目にその間に俺は斬り倒されてしまい少し見通しが良くなった場所をあたかも元通りになったかのように木の魔物達に移動するように指示する。これで冒険者達を分断することに成功する。
「よし、ラビィ攻撃だ!」
「任せて!」
ラビィには今回ある程度支配権を持たせ、俺のサポートをするようにしてもらっている。因みに魔物化した奴らは全員ダンジョンの支配下に置いている。どちらにしろDPにならないのだから支配下にした方が命令もしやすいしな。
限定的ではあるが、ラビィの指示の元動いた木々達は待ってましたと言わんばかりにその猛威を振るう。
◇◇◇
「うわぁ、えげつねぇ……」
「殺れって言ったのはクロトじゃん!」
「確かにそうだが、ここまでやっちゃうかね?」
たった今、独断で先行した冒険者のパーティーの1つが文字通り殲滅された。
されたとは言っても攻撃するよう指示したのは俺なわけだし殲滅したと言った方が正しいか。
「それにしてもグロいな」
「ぐっちゃぐちゃだね、ハンバーグみたい」
「それを言うな、ハンバーグ食べれなくなるだろうが」
モニター越しに見る冒険者達の死体はそりゃ酷いものだ、心臓を一突きするだけだなんて生易しい攻撃ではなく骨を砕き、殴打し、身体中鋭く尖った槍のようになった枝で貫かれ、最後の奴に至ってはフルコースだった。
結果としては良いだろう、ただ誤算があるとすれば木の戦闘力は厄介すぎると言う他ない。ハゲの冒険者……えーと、コーザだったかザーコだったかは忘れたが結構な戦闘力を持っていると推測出来た。こっちも何十本か殺られたしな、だがこれに関しては大きな痛手ではないな増やせるし。
それでハゲの話だが、木をあっさりと薙ぎ倒すほどの威力のある攻撃を繰り出せるのだ、恐らくスキルを使えばもっと戦えたと予測できる。今回は奇襲と相手側の油断で普通に倒すことは出来たがまともに戦ったらこっちの被害もそれなりだったかも知れない。
「ラビィ、冒険者の死体とへし折れた木を回収してくれて。死体はDPに、木はDPにならないから村エリア辺りに置いて欲しい」
「わかったー」
木に関しては折れてても加工すれば使い道はあるだろうし、冒険者の死体はDPとなる。うん、素晴らしい。
「そうだ、冒険者の持ち物はマスタールームに運んでくれ。何かに使えるかも知れないし」
お願い事をしつつ、未だに冒険者達の邪魔をしている砂には退避命令を出しておこう、今回の活躍で砂はかなり使える奴だと判明したし運用方法も幾つか思い付いた。試してみたいことは山ほどあるので失うわけには行かないしな。
砂って多分風系統の魔法で吹き飛ばさない限り無敵だしな。
「回収終わったよー。次はあの冒険者達?」
「いや、この階層ではもうある程度検証は終わったし恐らく警戒されるだろうから不意打ちは厳しい。この辺で次の階層に行って貰おう」
逃げるようならこの階層全てが敵に回るがどうするかな? どうやら進む選択をしたようだ。
『おい、コーザ達はどこに行ったんだ?』
『俺達が邪魔されてる間に進んだのか?』
『いえ、叫び声が聞こえましたし、襲われて戦闘になったのかも』
『戦闘音は聞こえねぇし……まさか殺られたのか? いったいいつ?』
ほほほ、不思議がっておるわ。
やはりこの奇襲は使えるな、今後もやっていこう。
『やはりこのダンジョンは何かあるな、進むぞ』
『引き返さねぇのか? 何があるかわかんねぇんだぜ?』
『だからこそだ、少しでも情報を集めなければ危険が及ぶかもしれない。それにアレだって持ってきている、そう易々と死ぬつもりはない』
ふむ、『アレ』とは何か気になるが何れ分かりそうだし次に進ませてやるとするか。
次は族長達の戦闘力を測るとしよう。
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