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スキルを使おう

 さて、なんとお得な2000DPと交換した【魔物化】のスキルだが、DPの安さに釣られて手に入れたのは良い。

 だけど使い方が分からない! スキルと魔法の違いとは!? そもそも魔法なんて使えませんけども!?


「これ、『ヘルプ』で答えてくれるかな? てか、『ヘルプ』ってどこまで答えるんだ?」


 スキルの使い方は?

『解、主にイメージが物を言います。火を出すなら火を想像するようにそして唱える事で発動します。なお、魔法もスキルも殆ど同じく魔力を消費します』


 へぇー、魔法とスキルって違いが殆ど無いわけか、これは簡単に考えられそうだな。

 使い方は良く分かった。だが問題は、このスキルの効果って何よ? と言うことだ。

 名前通りなら俺自身が魔物になるとか? いや、それはなんか嫌だな。そんなスキルなら御蔵入り確定だ。


「ダンジョンの方で試してみるか」


 手には買ったままマスタールームに放置していたイチゴミルクを片手に出ることにする。

 因みに鮮度が落ちていないっぽい。冷蔵庫要らずでヤッフーなのだ。


 マスタールームからダンジョンの迷宮エリアへと移動し、辺りを見渡す。……スライム達の姿は無いな。何してんだろう。


 ここならまぁ広いし、【魔物化】が恐ろしいスキルであっても被害は少ないだろう。スライム達も居ないことは幸いだな。


「さて、いざやると言うとかなり怖いな……嫌だな、止めとこうかな……」


 だって魔物になっちゃう可能性が有るんだぜ? 躊躇うよね? 俺は人間として生きていたい訳なんだが……そもそも俺が暴走してしまった暁にはダンジョンはどうなるのだろうか。

 そして暴走した俺を誰が止めるの? ユキムラと十勇士が止めるのか? でもアイツらに止められるのかな? いや、逆に止められたとしたらかなり恥ずかしいと思うんだがそこんところどうだろうか?


 等とブツブツチキントークを1人で繰り広げている。


「主! 探しましたぞ! この様な場所で何を……」


 ユキムラが唐突にやって来てその元気な声で俺を呼ぶ。


「うおおっと!? ユキムラ君!? ビックリしたわ!」


 完全に1人の世界に入っていた俺は突然の呼び声により尻餅をついてしまった。


「申し訳ございません! ……それで、この様な場所で何を?」

「いや、スキルの【魔物化】を使おう……」


 と思ってと言葉に出す前に体から何かがスッと消える感覚に陥ると、妙な虚脱感と眠気に襲われてしまう。


「あ、やべ」

「主? 主ぃぃいい!?」


 ユキムラの叫び声を聞きながら恐らく意識を手放した。


 




「ん? んー?」


 ……どうやら、気絶でもしてしまっていたようだ。ユキムラの五月蝿い声ですら起きなかったのだから相当深い眠りだったのだろう。


 にしても頭の後ろに感じるこのプニプニ……もしやユキムラか? アイツもなかなか可愛い事してくれるな。ほれ、プニプニ。でも少々弾力が強くないか? 心なしか暖かいし、これはこれで良いよね。

 いや、待てよ? ユキムラってスライムじゃん、暖かい訳が無いんだよ。え? じゃあこれなに? スベスベ何ですけど。


「あ、起きた!」

「へ?」


 目を開けると俺の顔を覗き込んでいる女の子が居る。……何故に? と言うことは、このプニプニスベスベはユキムラじゃない? もしや、膝枕か。


「すんませんっしたぁ!」

「わ!」


 咄嗟に飛び起きて距離を取るとバックステップ土下座を決める俺。見ず知らずの人に膝枕してもらうとか申し訳なさの方が全面に出てしまう。


「主! 無事で御座るかぁ! そこの女子! 主から離れよ!」


 どこかへ行っていたのか戻ってきたユキムラは俺のもとへ駆け寄り俺を守るためか前に出て敵を威嚇する。

 

「いつの間に侵入を……主! 無事で御座るか!? 取り敢えず外敵は排除する!」


 そう言うとユキムラは女の子に飛び掛からんとするが俺は咄嗟にユキムラを掴む。


「ちょいちょいちょい! 少し待って! 何もされてないし、本当に俺をどうこうするつもりなら既に死んでるって!」

「ぬぅ! 主がそう言うのなら……」


 俺の腕のなかでしっかり収まったユキムラは大人しくなる。

 ふぅ、危なかった。手を出すのは後からで良い、まずは話が通じるかどうかだ……。

 じっとその女の子を見ると浅黒い肌に赤色の髪をしたポニーテールな女の子。正直に言おう、可愛いと思います。年は近いかな。因みに俺は18だ。



「あ、あの、つかぬことお聞き致しますが、どちら様でしょうか?」


 いつの間にか俺のイチゴミルクを飲んでいるその女の子に話しかける。「ふはは! 教えるつもりなど無いわ!」と言われて斬りかかって来られたら逃げよう。


「初めまして! 私はダンジョンだよ!」


 は? 頭ぶっ壊れてるのでしょうか? それとも突発的な中2病患者かなにかかな? 自分の事をダンジョンとか。あ、俺はダンジョンマスターだ、宣言したら俺の方が頭のおかしい奴じゃないか。


 おっとそんなことより、ダンジョンとな? 俺を騙すにしても、もっとましな嘘が有ると思うんだが。


「ダンジョンとな? お主、某達を馬鹿にしておるのか」


 マジトーンなユキムラ君、かなり怖い。俺の方がビビってるんで止めて貰っても良いですか?


「バカになんてしてないよ、私はご主人様が作ったちゃんとした魔物だよ!」


 プンスコって擬音が着きそうな怒り方でユキムラに返す自称ダンジョンちゃん。

 それにしても……俺が作った? そんなもん作った覚えは有りませんが?


「主、それは真か?」

「スミマセン、さっぱり分かんない」

「貴様ぁ! 主は覚えておらんぞ!」

「ユキムラ、彼女に八つ当たりは良そうか」


 一先ず落ち着いて貰って……いや、落ち着いてないのはユキムラだけだな。だってずっとイチゴミルク飲んでるんだもん。大物だよきっと。


「作ってくれたじゃない! スキルで!」

「スキル?」


 確か、使おうとはしたけどビビった筈だ。そんでユキムラの声にまたビビってこけて地面に尻餅と手を着いた。

 そこからユキムラへと【魔物化】を使おうかと思ったと言う話をしたら、気絶。ふむ、多分使おうとしたときにダンジョンに触れていたから、ダンジョンが魔物化したってことか? はっはっは、そんなバカな事あるわけ……。


「ご主人様が転んじゃった時に私に触れたでしょ? そのときにスキル使っちゃったからだと思うよ」


 ありました。そんな訳ありました。なるほどねぇ、とんでもないことしてくれたな俺ぇ!


「流石は主! ダンジョンの魔物化など聞いたことも御座いません! この様なことを狙うなど……某、目から鱗に御座います!」

「うん、ユキムラ君。これマグレだから、狙ってないから。それで、君は本当にダンジョンなんだ?」

「だからそう言ってるじゃん! あ、これ美味しいね。お代わり欲しいな!」


 さらっとイチゴミルクのお代わりをねだるだと!? やはり大物か……まぁ良いだろう。イチゴミルクなんぞ安いものよ。

 取り出したイチゴミルクをダンジョンちゃんに渡し、話の続きをしようかと思ったが話すことなんて無いわけだ。


「戦闘とか出来るのかな?」

「多分無理だと思うな、私死んじゃうよ? あ、でもダンジョンなら好きに動かせると思うよ!」


 そう言うとダンジョンちゃんは正座の状態から地面を盛り上げる。思わずユキムラと俺は歓声を上げてしまう程だ。

 うん、ダンジョンだと言うことが証明されてしまった様だな。それにしても【魔物化】って自分以外にも使えたんだ……これなら他にも色々やれるんでない!? などと今後の事にワクワクしていると。


「ねぇ、ご主人様。私に名前ください!」

「え? 必要?」

「スライムにも名前があるんだから私も欲しいよ!」

「お主、少々某の事を舐めすぎでないか?」


 ユキムラの発言は無視される。仕方無いので撫でておこう。

 しかし、名前か……うーん、ダンジョンは英語とかでラビリンスとかだっけ。うん、決めた。


「じゃあ、ラビィで」

「その心は?」


 そんなん聞くんか。


「迷宮。つまり、ダンジョンは別名ラビリンスとも呼ぶんだ。だからその名称を弄ってラビィだね」


 すると「ラビィ……うん、いいね」と呟いたラビィは俺の方を見てニッコリと笑う。


「気に入った! ありがと、ご主人様って名前無いの?」

「あるぞ、俺の名前は白石黒斗って言うんだ。って黒斗って呼んでくれれば良いよ」

「クロトね、オッケー。よろしく! クロト!」

「お主、一応配下なのだぞ、不遜じゃないか?」

「ユキムラも呼んで良いよ?」

「いや、主は主ですから……」


 キョトンとした様に言うユキムラ。うん、まあ、良いか!


 どうやら思わぬ事態で仲間が増えた様だ。

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