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泣く……だと!?


 武器屋で短剣を購入した。

 武器なんて全く使えないが、少しでも冒険者っぽく見られなきゃ怪しい奴だと思われるからな。


 断じて武器持つって何か格好いいなんて思ったわけではない。断じてだ!


 なお、ここまでの所持金は色々と使ったお陰で銀貨1枚だ。

 おかしいな、誰がこんなに使ったんだろう。俺である。


 この間はゆっくり見てられなかったが、今回は時間を稼ぐ必要があったのでのんびりと物色していた。

 初めて本物の槍とか見たんだけど、結構重たいもんだな、ありゃ俺には使えん。


 この世界、時計なんて物がないので大体の感覚で生きなきゃならんわけだ。

 さっきの冒険者達と別れてから結構経ったと思うし、流石のアスカもサノーを引きずって依頼に行ったに違いない。


「ふはは、これより俺の時間だ!」


 何故か俺に近寄ってくる異名持ちとモテモテ魔物野郎は放置するのだ! 最初の目的は護衛だったが、サノーは首である! 腹立つから!


 八つ当たりはこの辺にしておいて、やるべきことは2つか3つ。


 1つ、依頼をこなして金をある程度は稼ぐ。

 2つ、ダンジョンの繁栄のためにこっそりとダンジョンの噂話を広める。

 3つ、宿を変える。


 1つ目は、ここでの生活基盤を整えなければ視察も儘ならないからな。世の中はお金で回るのだ、大事である。


 2つ目は、本来の目的だ。人を呼び込んでDPゲットだぜ作戦をするためだ。

 俺としては別に人を呼ぶ必要ってあるかな? って思うんだが、何せミストの奴がフラストレーションがぶっちしてるからな。


 俺以外の人間には悪いが礎となってもらおう!


 3つ目、これがわりと大事である。

 何せあの永遠ループのアスカと宿が同じなのだ、これは目をつけられるに違いない。

 食堂のおっさん共は優しいが、食事の時だけ向こうに行けば良いからな。


「そろそろ頃合いかな」

「流石に、サノー殿や危険な女もいないと思われます」


 ふむふむ、ロクロウも同じ意見か。


 ならいくしか無いだろう。


「これから冒険の始まりだな」

「見つけた」


 俺の冒険、開始2秒で終了。


 間違いなくギギギ、と錆び付いた機械のような音をたてて後ろを振り向くと、頬を膨らませたアスカ、そしてジト目をしたサノーがいました。


 ……早くね?


「なぜここに?」

「冒険者のキンと言う男性から聞いたのですよ。クロト様。ここでサボっているとね」


 額から汗が、背中もびっしょりだ。

 ヤバい、ご立腹だぞこれ。

 そして内通者がいた疑惑、奴等目ダンジョンの生け贄にしてくれるわ!


「ロクロウどうしよう」

「陛下、流石に逃げ切れないかと思います。私もサノー殿とアスカ殿の二人を相手にするのは無理です」

「やっぱり?」


 向こうに聞こえないようにロクロウと話す。

 どうやら詰んでいるご様子。

 

 あとさっきから喋らないアスカ、ちらりと見るとずっと頬を膨らませている。リスみたいだなぁと思っていると。


「約束」

「へ?」

「約束破った」


 あー、口約束を信じたご様子。

 ここまで素直だと心配な領域だが、なんだか微妙に罪悪感が……。

 

 いや違うわ、騙されるところだった!

 『はい』か『イエス』でしか答えられなかっただけだわこれ!

 強制的な約束だったわ、危ねぇ!


「破ったって言うか無理やりじゃね?」

「約束……楽しみに、ひぐっ、して、ぐすっ」


 ポロポロと大粒の涙がアスカから流れる。


 ……え? 嘘ぉ! どんな脈絡があって泣いてるの!?

 え、ちょ、むりむり、対処できないから!


「はい! 私が悪うござんした! さぁ! 楽しい冒険にでようじゃないかぁ!」


 泣き止ませるには約束(強制)を守るしかない!

 半ば自暴自棄になりつつも賛成することにしました。


 袖で涙を拭い、最後に鼻をすすったアスカは、大きく頷き俺に接近する。


 何をするんだろうか? なんて事を考えていると、襟を捕まれた。


 あれ、何このデジャブ。


「また逃げられると困る」


 1度も逃げたことはない件について。

 なお、逃走未遂の疑いはあり。


「サノー、何とかしてくれー」

「私は何も見ておりませんので」

「ちくしょう!」



◇◇◇



 冒険者ギルドにやって来ました(白目)。


 元々行くつもりではあったが、断じてコイツらとではない。


「サノー、何で二人きりで行かなかったんだよ。せっかく作ってやったのに」

「自分が逃げたいがために余計なお世話は結構ですよ。クロト様」

「本音は?」

「私も彼女と二人きりは後免ですので」


 何話せば良いかわかんねぇもんな。

 考えてることがいまいち良くわからない娘だから。


 そんなアスカは心なしか生き生きとした表情で依頼(地獄行き)を選んでいた。

 流石に俺らは初心者、そこまで難しいものでは無いことを期待したい。


 そもそもここの地獄基準はなんだろうか、ドラゴンの討伐かな?


 ここは安全策としてダンジョンを進めるべきか? いや、アスカの実力なら多分攻略される可能性あり、自分の首を絞める事になるな。却下だ。


 もう少しランクの低い奴等に頼む事にしよう。


「これにする」

「ん? どんな依頼なんだ?」

「ドラゴン討伐」

「止めようか、今すぐ戻してきなさい!」

「……なんで?」


 アホの娘か、ちょっと予想してた奴をさらりと持ってくるんじゃないよ!


「俺らのランクじゃそもそも受けられないと思うんだ……初心者だぞ?」

「確かに、私もいきなりドラゴンは勘弁ですね」

「む、不服。ドラゴン可愛いのに……」


 見たことないけどドラゴンは可愛いものじやないと思う。

 え、この娘ドラゴン可愛いと思ってるの? 感性ぶっ壊れてない? そしてその可愛いもの討伐、悪く言えば殺して剥ぎ取る訳じゃん。


 もしかして、蝶々とかの羽を引きちぎるタイプなのかな? スケールがでかすぎるわ!


「初心者でも出来そうな奴にしてくれ。死ぬと依頼が一緒に受けられなくなって困るぞ」

「む、確かに。なら、薬草の採取にする。これなら簡単」

「おお、マトモだ」


 アスカは依頼書を両手で持ちながら受付へ行く。

 受付の辺りにたむろしていた冒険者達はアスカに気がつくと左右に別れていく。


 海が割れ、そこを悠々と進んでいる様にも思える。あれは、なんて言うんだっけ? まあ良いか。


「これ受ける」

「は、はい。え!? 薬草の採取!? こんなもので良いんですか!?」


 受付嬢の驚きの声で周りの冒険者にもどよめきが走る。


「嘘だろ?」

「あの『竜狩り』が……?」

「高ランクの依頼しか受けないあの娘がか!?」

「入りたてで速攻オークぶちのめした奴が採取だと!?」

「おい、事件だろ!」


 アスカの評判は一体どうなっているのだろうか、きっと良い評判は無さそうだな。


「ん、クロト。採取に行く」

「お、おう」


 こうして俺とサノー、アスカの3人は初めての依頼を受けることになったのだ。


 あ、キンとか居なかったな。

 せっかく八つ当たりしようと思ったんだが……次会えばそうしよう。 

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