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体育祭も楽しまなきゃね(校長談) 8

 …それでも…私がオオガキ君とペアになった事、タダは本当に気になってたのかな?

 …それはタダが私の事を好きだから?でもあれからもう好きとかも言われないし、もちろん付き合おうなんて言われないし、そんな事までは思ってもいないのはわかる。教室でも本気の普通だから。たまに目が合っても私が意識して反らしてしまう。でもオオガキ君と私が走るのは『すげえイヤ』だって。それも素の感じで言ってたし。

 それでも私がこんなにタダの事を気にしてしまうのは、タダが私を好きなのが嬉しいから?ヒロちゃんの事があんなにずっと好きだったのに?それで今でもやっぱりヒロちゃんが好きなのに?


 けれど、そもそもだ。本当にタダが私の事を好きだとして、私のどこがいいわけ?ヒロちゃんに4回も振られてんのをそばで見てたくせに。笑ってたくせに。

 自分の親友が4回も振った女子、好きになるかな。普通はならないよね!

 



 「ごめんオレ歩幅大きいね」オオガキ君が言う。

「う~~ん…でも男子だからしょうがないよね。やっぱ男子同士だったら速く走れるのにねぇ」

「男と走っても面白くないって!オレ、大島さんと当たって嬉しいけど結構」

え…

 ぽっ、と赤くなったのが自分でもわかった。

「あ、ごめん」とオオガキ君。「変な事言った。てか変な事じゃなかったけど思い切り言い過ぎた。ごめんごめん。…あれ?なんかちょぼちょぼ人増えてきたね」

そうなのだ。校庭に人が多いせいか私たちの他にも何組かこのグラウンドを使うようで…って、あれ!?

 オオガキ君が言った。「水本せんせーじゃね?」

 私も見つけたよ。そして…

オオガキ君が付け加えた。「それとイズミ君だねえ」

 わ~~、と思う。こっちに来ないで欲しい。練習見られたくないもん。転んじゃいそうだし。



 「オオガキ~~~」とさっそく叫ぶ水本先生。

 こちらに近付いてくる水本先生の少し後からついて来るタダが、私とオオガキ君のつながった足首を見ているような気がしてならないので私はタダの方を見れない。

「さっそく始めてんのか~~」と水本先生。「オレたちもこっちでやるわ。なんかタダの周りにギャラリーが多くてな、始める前から女子が周りを囲って練習にならんから止める振りしてこっち来た」

「へ~~やっぱすごいねイズミ君」とオオガキ君。「でもそれせんせーもでしょ?先生も人気あるじゃないっすか、女子に」

「そうか?」とちょっと嬉しそうな顔をした先生はしたり顔で言った。「先生はな、年上が好きだぞ」

「マジか」とオオガキ君が笑う。

あ~~…うんうん。先生、年上が好きって日ごろから言ってるよね。もうやだ~~って女子に言われてるよね。



 「それでどうなんだ?」と先生がちょっとニヤニヤしながらオオガキ君に聞いた。「大島の調子は。ちゃんと面倒見てやってんのか?」

 もう…水本先生、余計な事を。

「面倒て…」とオオガキ君は苦笑する。「楽しく練習してます!」

「そっかそっかタダが心配してるからな大島の事」

「「へ!?」」と私とオオガキ君。

「ちっ」とタダが舌打ちをする。

ほらもう~~~水本先生~~~。ほんと余計な事ばっか。タダが舌打ちしたじゃん私がされたようなものじゃん。

「今舌打ちはしたけれども!」と先生が真面目な顔で言う。「実際タダは心配してます」

「もう!先生…」と私が言いかけたところでオオガキ君が水本先生の軽口を止めてくれた。

 「じゃあ」とオオガキ君は私の肩を掴んでペコっと水本先生におじぎをした。「オレら練習の続きするんで。はい、大島さん、せ~~の!1、2、1、2…」

 促されて足を出す私。

「もう大島さん、さっきやってたじゃん。オレの腰掴んでって」

「…あ…うんごめん」

「いいからほら」



 けれどそうやって行こうとした私たちをタダが呼んだ。「オオガキ!」

「「「え?」」」

呼ばれたオオガキ君だけではなくて、タダが私ではなくオオガキ君を呼び止めた事に驚いてつい私も、そして水本先生まで一緒に声を合わせた。

「オオガキ、悪い」とタダが言う。「1時間な。練習。悪いけど大島オレと一緒に帰るから」

え…


 「そうなの?」オオガキ君が私に聞く。

「え…っと…」

「大島」とタダが今度は私に言った。「今日もオレんち寄って。この前のシャーペン返すし」

「おお?」、と水本先生が目を見張った。「お前ら家に行き来してんのか?」

「いえ!」ととっさに否定する私だが、水本先生は言った。

「まあ中学一緒だしな。お前ら」

「「小学からです」」とタダと声を合わせて訂正してしまってバツが悪い。

「仲良いんだねぇ」とオオガキ君。「小学から一緒かぁ。でもイズミ君。悪いんだけど今大島さんはオレの相方だから。1時間もどうかなぁ。大島さんの頑張りしだいだね。じゃあね!」



 1、2、1、2、と言うオオガキ君の掛け声でオオガキ君に引っ張られるようにタダたちから離れた。何回か躓きそうになり恥ずかしい。その度にオオガキ君がギュッと私の肩を掴む手に力を入れて体勢を整えさせてくれた。

「本当はイズミ君と付き合ってんの?」とオオガキ君が聞く。

「付き合ってないよ!」力強く答え過ぎだ私。

「大島さんてイズミ君の友達の事が好きなんでしょ?女子が言ってたけど」

「…そうだけど…」

 この後本当にタダと帰るの?そしてタダのうちに寄るの?…

 

 「あっ!」と急に声を出してしまい、オオガキ君がビクッとした。

「なに?」

「あ、いや何でもないんだけど…」

「なにそれ、今結構大きな声で『あ!』って言ったじゃん」

「いや…ごめん別にたいした事じゃなかった」

「もう~~」と言ってオオガキ君がちょっと身を翻していきなり私の両肩を掴んでグラグラ揺すりながら言った。

「ちゃんと言って。結構大きな声で『あ!』って言ったじゃん。気になるじゃん」

「…帰り…私ケーキ屋さんに寄るんだったの思い出して」

「ケーキ?ケーキ買うの?」

「うんまあ…予約っていうか?」

「誰かにあげんの?」

「…恥ずかしいんだけどね、自分の誕生日用。お母さんが帰りに好きなの予約しておいでって言うから」

「へ~~そっか。いつ誕生日」

「16日」

「すぐじゃん。おめでと」

「ありがと」

「じゃあこの走るコーチ役がオレからの誕生日プレゼントにするわ。今からすげえちゃんとやるから」

「…ありがと」


 

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