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体育祭も楽しまなきゃね(校長談) 6

「え~~~」と声を上げたユマちゃんは面白そうにニヤニヤ笑っている。

ユマちゃんがタダに聞いた。「それは何?オオガキなんかと練習させないぞって事?」

「…」

ユマちゃんの質問に無表情、無言のタダ。そして私も、もう~~~ユマちゃんは~~~~、と思う。タダは私がどんくさいの知ってるから、またちょっとからかう感じで言ってんだよ。…それなら練習してくれた方が助かるかも…良く知らない、そしてすごく速く走れるオオガキ君に迷惑をかけなくて済む。けどどんくさいって言っても、10人で走ったら7番か8番くらいには入ると思うけど…

 あ、いやでも!二人三脚の練習なんかタダにしてもらったら私たぶん…ウソみたいにタダの事意識してしまうかも!

 今だって花火大会の事とか、『好きだ』って言われた時の事をすぐチラチラ思い出して変な風に意識したらいけないから、何とか思い出さないように、目の前の無表情にタダに集中してんのに。

 …タダの足と私の足をひもで結ぶ…タダの手が私の肩を掴み、そして私もタダの肩を…わ~~~ダメだ!


 だから「それは…」と、タダとの二人三脚を振り払って聞いた。

「オオガキ君と練習するのに迷惑をかけないための、練習のための練習してくれるって事?ユマちゃんとこも練習すんの?」

「するよたぶん。まだ何も決めてないけど」

「じゃあ」とタダにも聞く。「先生とタダも練習すんの?」

「…」

私の質問にも無言のタダ。でも舌打ちはされた。「ちっ」

 舌打ち!


 「先生と走るの大変そうだよね」と私は言ってみる。「みんなに見られそう。てか絶対すっごい見られるね」

「「そんな事どうでもいい!」」

ユマちゃんとタダが声を合わせて私に突っ込んで来たのでビクッとした。「…え?」

「もうユズちゃん…」とユマちゃんが困った顔で言った。「ユズちゃんはダメニャンだなぁ!」

…え?ダメニャン?

ユマちゃんが言う。「せっかくタダがヤキモチ焼いてんのに。ねえ?タダ」

ヤキモチ!思わずタダの顔を覗き込んでしまった。

「見んな」とタダが私に言った。

「きゃ~~~」とユマちゃん。「タダ可哀そう。わかっててやってんだよユズちゃんは。性質悪っ!」

 


 ヤキモチ!

 私に!

 私にっていうかオオガキ君に?抱きしめて来た後も、好きだって言って来た後も、超普通だったタダが?そして今現在も超普通のタダが?


 「なんか赤くなってんねユズちゃん」

からかうようにユマちゃんに言われて慌てる。「なってないよ」

「だってねえ?」とユマちゃんがタダに聞く。「ユズちゃんとオオガキが一緒に走るの嫌だよね?」

もう!「ちょっとユマちゃん…」

「すげえイヤ」と普通に答えるタダ。

うそっ!と思ってとたんに焦る私と「おおっ!」と目を輝かせるユマちゃん。


 あ、ハタナカさんまで来た!

「ユズりん、タケトと走るんだ~~~」

タケト?オオガキ君の下の名前タケトか。そっかユマちゃんがハタナカさんと同中って言ってたな。だからオオガキ君も知ってんのか…

「ハタちゃんオオガキの事好きだったよね」

ユマちゃんが悪気のない笑顔を前面に出して言った。でもたぶん笑顔のすぐ裏に結構な悪気が隠れてるやつだこれ。

「あ~~…まあね」ハタナカさんが普通に答える。

 そっかハタナカさんオオガキ君が好きだったのか。オオガキ君もモテそうだもんね。

「でも私」とハタナカさん。「今はイズミ君だけが好き」

『イズミ君だけ』に力を入れてハタナカさんがタダを見つめながら言った。

 それについて、嫌がりもしない、照れもしない、素のタダがイヤだ。


 「それで?」とハタナカさん。「イズミ君はなに?ユズりんがタケトと走るのが嫌なの?」

「「「…」」」

私とタダ、ユマちゃんまでもが無言になる。ハタナカさん聞いてたのかな。

「写真撮りたいな~~水本センセェとイズミ君が走るとこ。撮りたいな~~~」

「「「…」」」

もう一度繰り返すハタナカさん。「撮りたいな~~」

「ねえユマちゃん」と私はユマちゃんに聞いた。「…さっきさあ、なんかあれ、ダメニャンて言ってたじゃん、あれなに?」

「は?」とユマちゃん。


 「さっき言ってたダメニャンてなに?」

「今それ!」

ユマちゃんが教室中に響き渡るような声で言ったのでビクッとして慌てる。止めてユマちゃんみんなが見るじゃん。

「あ~じゃあもういいです」と言ったらユマちゃんが説明し始めた。

「ダメニャンてねえ、うちのブチとぼけたネコがね、出ちゃダメだって言うのに外に勝手に出て、隣の家でウンコして来て、あとでうちのお母さんが隣のおばさんから注意されたりとか、雨がすんごい降ってんのにやっぱ外出てびしょぬれになって帰って来て、当たり前のようにソファの上座ったりとかさ、でも自分はネコだから許されるってはっきり思ってんだよね。そういうネコを見て私はいつも『ダメニャンだなあ!』って言ってんの。なんかそういう感じがさっきのユズちゃんから出てたからさ」

「はあ!?」私はそんな傍若無人者ないわ!



 「『はあ?』じゃないから」と言ったのはハタナカさんだ。「そういうとこあるからユズりん」

「あるある、あるんだよユズり~~~ん」と笑いながら言うユマちゃん。「タダが一所懸命ユズちゃんの事気にしてんのに、『なんの事?』みたいなね。もうなんだったら『タダって誰?』くらいの感じじゃん。ねえ?タダ?オオガキとの事も心配してんのにねえ」

 タダは何も答えなかったが、ハタナカさんが「ユズりん?」と低い声で私を呼んだ。

 「ユズりん、確認するけど、ユズりんの好きな子ってイズミ君の親友なんでしょ?ずっと片思いしてきたけど、もう6、7回振られてんでしょ?」

4回な!

「好きな子がいるんでしょそのイズミ君の親友」

いるけど。

「でもそれを可哀そうに思った優しいイズミ君が仕方なくいつもフォローしてくれてるんでしょ?」

「…」

「なんでイズミ君は、ユズりんがタケトと走るのまで心配すんの?ねえなんで?」

ユマちゃん余計な事言わないで!とユマちゃんを睨んだところで予鈴が鳴り、ハタナカさんは『ぶ~~~~!』という感じの変な顔を私だけにして見せ、私たちは自分の席に戻ったのだ。



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