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突然魔法少女? 89

『さあ……機械帝国の野望を倒すんだ』 

 そう力の入らない口調で言葉をつむぐグリンを見つめるシャム。隣に立つ小夏はそんな妹役のシャムを不安そうに見つめる。シャムの表情にはどこかさびしげな影が見える。そして誠は引き込まれるようにしてシャムの言葉を聞くことに下。

『違うよ、それ』 

 ポツリとつぶやくシャム。突然音楽が流れ始める。悲しげでやるせなさを感じる音楽にあわせて遠くを見つめるように空を見つめるシャム。

「吉田さんの即興かな?」 

 彼女の涙に濡れる顔が画面に広がる。

『確かにグリン君が言うとおりかもしれないけど。確かにあの魔女はグリン君の大事な魔法の森を奪ったのかもしれないけど。でもそう言う風に自分の意見ばかり言っていても始まらないんだよ』 

『そんなことは……あいつは森の仲間を殺したんだ!そして次々と世界を侵略し……』 

 激高するグリンを手にしたシャムはそのまま顔を近づける。

『でもぶつかるだけじゃ駄目なんだよ。相手を憎むだけじゃ何も生まれないよ!』 

「やっぱり出た!お前はいったいいくつなんだ展開!」 

 誠が手を叩くが、さすがにこの誠には付いていけないというように楓と渡辺はそんな誠を生暖かい目で見つめている。

『理解しあわなきゃ!気持ちを伝え合えなきゃ!そうでないと……』 

『シャム!そんなのんきなことが言える相手じゃないんだろ?世界の危機なんだろ?』 

 そう言って魔法の鎌を構える小夏。

『アタシは戦うぞ!守るものがあるからな!』 

 そう言って小柄なシャムの頭を叩く小夏。だが、釈然としない面持ちで手のひらサイズの小熊を地面に置くと杖を構えた。

『じゃあ、誓いを立ててください。必ず悪を退けると!』 

『ああ!』 

 小夏は元気に返事をして鎌をかざす。そしてそれにあわせるように杖を重ねるシャム。

『きっと倒してみせる!邪悪な敵を!』 

『いつか必ず分かり合える日が来るから!』 

 小夏、そしてシャムの言葉で部屋が輝き始める。その展開に目を輝かせる楓と渡辺。

「シャム先輩のアドリブか。アイシャさんが駄目出ししなかったけど……後で台本変更があるかもしれないな」 

 誠は画面の中で変身を解いて笑うシャムと小夏を眺めていた。そこに脇から突然声が聞こえた。

「なるほど……そうなんですか。さすが先輩は詳しいですね」 

「うわーぁ!」 

 誠はもう一人の部屋の中の存在、彼が忘れていたアンに声をかけられて飛びのく。

「そんなに驚かないでくださいよ……」 

 そう言って胸の前で手を合わせて上目遣いに誠を見上げてくるアン。脂汗を流しながらそんなアンを一瞥した後、画面が切り替わるのを感じて誠は目を自分の端末のモニターに戻した。

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