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突然魔法少女? 86

 誠の端末のモニターが切り替わる。それを見て作業をしていたカウラの表情が苦々しげなものに変わる。

『すみません!本当に僕こんなことに巻き込んでしまって……』 

 少年の声で話す小熊が画面の中であまりにも普通な小学生姿のシャムに謝っていた。周りは電柱は倒れ、木々は裂け、家は倒壊した惨状。どう見ても常識的な魔法少女の戦いのそれとは桁違いの破壊が行われたことを示している。

「おい、なんでこうなったんだ?」 

 要がたずねてくるのだが、誠もただ首を振るだけだった。それでも言える事はアイシャはかなりの『上級者』、いわゆる『マニア』向けにこの作品を作ろうとしていることだけは分かった。

『気にしないで大丈夫だよ!』 

「少しは気にしろ!」 

 シャムの台詞に突っ込む要。思わず生暖かい目を彼女に向けるとそこには仕事をサボって覗きに来た楓と渡辺、アンの姿がそこにあった。

『それより世界の平和がかかっているんでしょ?やるよ!私は』 

「世界の平和の前にこの状況どうにかしろ!」 

 そう言って手近な誠の頭を叩く要。誠は叩かれたところを抑えながら仕方なく画面を見つめる。

『ありがとうございます。ですが、僕の与える力は三人分あるんです。だから……』 

『じゃあおねえちゃんに頼みに行こう!』 

 そう言って小熊を抱えるとシャムは走り出した。半分町が焦土と化しあちこちにクレーターのある状況を後ろに見ながら彼女は走り続ける。

「おい!この状況は無視か?いいのか?ほっといて!」 

 再び要の右手が誠の頭に振り下ろされようとするが、察した誠はそれをかわす。

 画面の中では走っていくシャムの後姿がある。同時にパトカーのサイレンが響き渡る。その画面を見ながら楓と渡辺が大きく頷いてみせる。誠は一体なんでこの二人が頷くのか首をひねりながら再び画面に目を移した。

 場面が切り替わった。そこはやはり誠の実家の一部屋だった。主に剣道の大会で役員の人などを止める客間の一つ。そこにシャムと奇妙な小熊もどきを正座して見つめているのはシャムの姉役の家村小夏だった。

『そうなんだ……大変だったのね、グリン君……』 

「いや、大変とかそう言う問題は良いから。さっきの破壊された町だけでも十分大変なことだから」 

 そう突っ込む要が握りこぶしを振り上げるのを誠は察知してかわしにかかるが、今度はそのまま避けた方向にこぶしが曲がってきた。そのまま顔面にぶち当たり、誠は椅子ごと後ろに倒れる。

「おう、大丈夫か?」 

 何事も無かったかのように誠を見下ろす要。仕方なく誠は今後は避けないことを決めて立ち上がった。

『分かったわ!お姉ちゃんも助けてあげる!二人でその機械帝国を倒しましょう!』 

 そう言って手を差し出す小夏。その上にシャムが、そしてグリンと名乗った小熊が手を重ねる。

「そう言えばさっき三人そろわないといけないとか言っていたような……」 

 楓が首をかしげる。

「いえ!こういう展開がいいんです!これぞ上級者向け!どう考えても前後で矛盾している設定!いいなあ、萌えるなあ……」 

 そう言って画面にくっついて見入っている誠に要が生暖かい視線を送っていた。

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