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突然魔法少女? 84

 アイシャに言われるままに倉庫を飛び出すとそのまま駆け足で法術特捜の分室や冷蔵庫と呼ばれるコンピュータルームを通り過ぎて実働部隊の部屋に戻る。そのあわただしい様子にランや楓はものめずらしそうな顔をしていた。

「クバルカ中佐!出番ですよ」 

 誠は机に向かって事務仕事をしているランに声をかけた。

「面倒くせーな。ったく……」 

 そう言いながら椅子から降りるラン。彼女の幼児のような体型では当然足が届かず、ぴょいと飛び降りるように席を立つ。

「なんだ?神前。文句でもあるのかよ」 

 ランが不思議そうに誠をにらむ。実際何度見てもそんな態度のランのかわいさに抱きしめたくなるのは仕方の無いことで両手がふるふると震えた。そんな誠の様子を見て噴出しそうになる渡辺の口を楓が押さえている。その様がこっけいに見えたらしく噴出したアンをさらにランがにらみつける。

「そう言うわけでは無いんですけど……」 

 口を濁す誠を慣れているとでも言うように右手を振りながら扉に向かうラン。ドアを閉める直前でじっと大きめに見える目で部屋をくまなく眺めた後戸を閉めて姿を消した。

「神前先輩、どうでした撮影は」 

 自分の椅子に腰掛ける誠に手にコーヒーを持ったアンが擦り寄る。

「ああ、俺が出る幕も無かったよ」 

「おう、神前。アンに対するときは俺でアタシ等には僕か。微妙な言い回し……もしかして……」 

 それまで呆然と目の前のモニターを眺めているように見えた要がにやけながら二人を見つめる。そこにアイシャのような腐った妄想が広がっているのがわかってさすがの誠も動揺した。

「何を言うんですか!要さん」 

 タレ目を見開いている要に、誠は思わずそう叫んでいた。

「そうですよね。僕は……」 

 いじけるアンの後ろから鋭く光る楓と渡辺の視線が誠に突き刺さる。

 あえて要と楓、そして渡辺にかかわるのを避けるように誠は端末を起動させる。非番だが誠は昨日の仕事の続きをすることにした。法術との関係が疑われる事故や犯罪のプロファイリングだった。写っているのは不審火の現場。これ以外にも三件あった。

 法術特捜の主席捜査官の嵯峨茜の誠達へ出されたこうした宿題は分量的にはたいしたものでは無かったが、その意味するところは実戦を経験してきた誠にも深刻であることが理解できた。無許可の法術使用、特に炎熱系のスキルを使用したと思われる事件の資料。無残に焦げ付いた発火した人々の遺体ははじめは誠には目を向けることもできないほど無残なものだった。

 そんな事件のファイルを見ながら鑑識のデータを拾い報告書の作成を始める誠。だが、すでに提出を終えている要は暇そうに部屋を見回して誰かに絡もうとしていた。

「お姉さま、コーヒーでも飲まれますか?」 

 誠の隣の席で暇そうにしている要に楓が声をかける。

「別にいらねえよ……、神前。そこの資料は同盟司法局のデータよりも厚生局の資料を見てから書いたほうが正確になるぞ」 

 要の言葉に誠はそのまま厚生局の法術事故の資料のフォルダーを開いた。

「ありがとうございます……ああ、あそこは法術犯罪のケースのまとめ方がうまいですね。参考になります」 

 そう言いながら資料に目を通す誠。そんな彼の横から明らかに敵意をむき出しにした楓の視線が突き刺さる。

「ったく暇でしょうがねえな。こういう時に限って司法警察の連中の下請け仕事も無いと来てる」 

 退屈そうにくるくると椅子を回転させる要。

「第四小隊はM10の新動作プログラムの試験に出たっきり……うらやましいですよね」 

 楓がしみじみと語る。保安隊実働部隊。アサルト・モジュールでの実力制圧活動を行う部隊は四つの小隊で構成されていた。

 東和陸軍の教導部隊のエースであるクバルカ・ラン中佐の指揮する第一小隊。彼女は保安隊副長でもあるので実働部隊全体の指揮官とも言えた。そこには遼南救国の英雄とも言われるナンバルゲニア・シャムラード中尉、伝説の傭兵と語り継がれる電脳を持った悪魔の二つ名の吉田俊平少佐が所属し、事実上の保安隊のエース部隊といえるものだった。

 誠が所属するのは第二小隊。隊長はカウラ・ベルガー大尉。そして隣でぶらぶらしている西園寺要も隊員の一人である。

 そして胡州・遼南の混成部隊第三小隊。ここには胡州四大公の爵位を持ち、保安隊隊長嵯峨惟基特務大佐の次女の嵯峨楓を隊長とした部隊である。まだここに配備される予定のアサルト・モジュール『烈風』が到着していないために実質的には今は事務処理要員扱いを受けている。

 そして最後の第四小隊になるわけだが、その部隊はこれまでの部隊とは少しばかり性質の異なる部隊だった。

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