突然魔法少女? 71
「ったく!おごりってここのことかよ」
数時間前まで深刻な顔をしていた要はそう言いながらも次々とたこ焼きを口に運んだ。そんな彼女の後頭部にお盆の一撃が加えられる。
「うちでなんか文句あるの?今日はアイシャの姉さんからの監視の指示が出てるからおとなしくしているのよ!」
お好み焼きとたこ焼きの店『あまさき屋』の一階のテーブル席に座る誠と要とカウラ。要を殴ったこの店の看板娘にしてシャムの舎弟、家村小夏はそう言い残して厨房に消えた。
「まあ、あいつなりに私達に気を使っていると言うことだ。それに私はここのたこ焼きは大好きだがな」
カウラはそう言いながら大きな湯のみで緑茶を飲み始める。
アイシャが言うには撮影はすべて吉田の作った簡易3Dシミュレータを使うと言うことで、その場面やデータの入力の為に吉田とアイシャ、それに運行部の数名が引き抜かれて徹夜で作業をするということだった。当然副長のランが飽きれた顔で部隊長の嵯峨への上申の光景を見ていたのを想像するのはたやすかった。
そして不満の塊のような要を取り込むため、アイシャは小夏に連絡を取って『あまさき屋』のたこ焼き定食と大瓶のビール二本で手を打つように仕向けた。いろいろ言いながら、要はさらに自腹でアンコウ肝とレバニラ炒めを頼んだ上に、キープしてあるウォッカをあおりながら誠の隣に座っている。
「しかし今回はセットとかはどうするんだ?去年のようなドキュメンタリーじゃ無いんだろ?」
カウラはご飯に豚玉のお好み焼きを乗せた特製その名も『カウラ丼』を口に運ぶ。誠はそんな彼女をいつものように珍しい生き物を見るような視線で見つめていた。
「あれがドキュメンタリー?ただカメラ固定してキムの奴の手元を撮ってただけじゃねえか。まあ説明するとだな。まず場景を立体画像データとして設定するわけだ。たとえば家の台所とかのまあセットみたいなものをコンピュータに認識させるわけ。そしてその中にデータ化された役者を投入する」
「そこが分からないんだ。どうやってするんだ?」
あまり部隊の任務以外に関心を示さないカウラが珍しく要の言葉に聞き入っているのを誠は微笑みながら見つめていた。
「まあ、ここ数年の精神感応系の技術の向上はすごいからな。まあヘッドギアを役者……っつうか素人だからそう呼ぶのも気が引けるけど、アタシ等がつけてコンピュータ内部に入り込んだような状態で中で台詞を読んだり動いたりするわけだ」
そこまで言うと要はレバニラ炒めを口に掻き込んでそのままビールで胃に流し込む。
「でもそれじゃあ棒読みとかだとつまらないんじゃないのか?」
カウラはうまくソースと豚肉、それにお好み焼きを混ぜ合わせたものを口に運ぶ。
「それは吉田の技術で解消するつもりだろ?あいつの合成や音声操作とかで棒読みだろうが声が裏声になろうがすべて修正してプロが演じているようにするって言ってたぞ」
たこ焼きを口に放り込もうとする要の姿を腕組みして感心しながら見入るカウラ。
「さすが吉田少佐だな」
「別に感心することじゃないだろ?楽器屋に行ったら廉価版のビデオクリップ作成ソフトとかで同じようなことができるはずだからな。まあ、画像の質とか修正の自由度なんかは吉田が使っているソフトがはるかに上なのは間違いないけどな」
誠は珍しく穏やかに話し合う要とカウラの姿を見て安心しながらビールを飲み干した。
「ああ、神前。ビールだな」
カウラがビールの瓶を手にする。普段ならここで要の妨害が始まるはずだが、珍しく要はそれが当然だというように自分のグラスに酒を注いで杯を掲げた。




