突然魔法少女? 7
引きつった笑いを浮かべるアイシャに誠は自分の言葉が足りなかったことを悟った。
「いえ!あの主役がナンバルゲニア中尉なのが……」
アイシャの顔が威圧的な表情へと変わる、それを見て言葉をどう引っ張り出そうかと誠の頭は高速で回転し始めた。
「あー!こんなところにいた!」
すでに制服に着替え終わっていたシャムと綿菓子を手にそれに従う小夏と同級生達。
「シャムちゃん。誠君が話があるそうよ」
そう言って軽くシャムの頭を叩いて立ち去ろうとするアイシャ。当然のように右手でカウラを引っ張って行く。
「お話……何?誠ちゃん?」
小柄なシャムが誠を見上げてくる。小夏達も不思議そうに誠を見上げている。
「別にそんな……なんでもないです!」
そう言うと誠はアイシャの後に続いた。
「待ってくださいよ!アイシャさん!カウラさん!」
走り出す誠。振り向けばシャム達も走ってついてくる。一本の社へ向かう道の両脇には店が並び、広場には屋台が出ている。不思議そうにそれを見回すカウラ。
「別に珍しくないでしょ。私達ももう慣れてきても良い頃よ」
そう言うアイシャに追いついた誠は少し心が動いた。アイシャ、カウラ。二人とも普通にこの世に生を受けた存在では無かった。
全地球圏とかかわりを持つ国家が争った第二次遼州大戦。その中で国力に劣る遼州星系外惑星の国家ゲルパルト帝国が発動した人工兵士製造計画。それが彼女達を生み出した。戦うため、人を殺す兵器として開発された彼女達だが、結局大戦には間に合わず戦勝国の戦利品として捕獲されることになった。
この誠が生まれ育った国、東和は中立を守ったが、それゆえに大戦で疲弊しなかった国力を見込まれて彼等の引き受けを提案されてもそれを拒むことができなかった。そしてそれ以上に疲弊した国家の内乱状態を押さえつけることで立場を拡大しようとする東和政府は即戦力の兵士を必要としていた。
そんな経歴の二人のことを考えていた誠だが、すっかり東和色に染められたアイシャはいつの間にかニヤニヤ笑いながらお面屋の前に立っている。
「ねえ、誠君。これなんて似合うかしら」
そう言って戦隊モノの仮面をかぶるアイシャ。妙齢の女性がお面を手にしてはしゃいでいるのが珍しいのか、お面を売っているおじさんも少しばかり苦笑いを浮かべている。
「あのなあ、アイシャ。一応お前も佐官なんだから……」
説教を始めようとするカウラの唇に触れて指を振るアイシャ。
「違うわよ……市民とのふれあい、協力、そして奉仕。これが新しい遼州同盟保安隊の取るべき……」
そこまで言ったところで飛んできた水風船を顔面に浴びるアイシャ。その投げた先には両手に水風船を買い込んだシャムが大笑いしている姿があった。