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突然魔法少女? 69

 誠の予想通り響く連続した銃声。誠はそのまま駆け出した。積み上げられた廃材の山を通り抜け、漫画雑誌が山と積まれた資源ごみの脇をすり抜ける。

 射撃レンジでは警備部の屈強な男達が見つめる中、弾を撃ちつくして拳銃のマガジンに弾を込めている要の姿があった。どう話を切り出せばいいのか迷う誠の目の前で、金髪の短い髪をなびかせながら要に見つからないように手を振っている警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐の姿が見えた。

 一心不乱で弾を込めている要に見つからないように忍び足でマリアのところに近づく。声が届く範囲のところにまで来たところで部下達が気を利かせたように警備部の自動小銃AKMSの散発的な射撃を開始した。

「どうしたんだ?あいつ、いきなりうちの新人の射撃訓練をやめさせて自分の銃を撃ち始めて……」 

 不審そうに誠を見つめるマリアの視線が誠に向けられる。そんな二人の周りを手の開いた警備部員達がニヤニヤ笑いながら見つめていた。

「ちょっとアイシャさんにいじられてああなってしまいまして……」 

 申し訳ないというように誠は頭を掻いた。マリアは腑に落ちないと言うように首をかしげる。

「隊長もそっちの話はからっきしですからね」 

 古参のひげ面の少尉が笑っている。しばらく彼の顔を見つめていたマリアだが、ようやく気づいたように鋭い視線で少尉の顔を見つめた。ひげの少尉は含み笑いを浮かべながらこっけいな敬礼をするとそのまま手にした自動小銃にマガジンを差すとすばやく薬室に弾丸を装弾してフルオート射撃を始めた。

「まあ、私に助言ができないことは間違いないけどな。それにしても……」 

 そう言うマリアの視線には愛用の銃、スプリングフィールドXD−40に弾丸を込め終えた要の姿があった。すばやくマガジンを銃に差し込んだ要は一服したように周りを見て、そこに誠がいることに驚いたような表情を浮かべると、そのまま銃のスライドのロックを解除して弾薬を装弾した後彼に向かって歩いてきた。

「なんだよ。文句あるのか?今月の射撃訓練はまだかなり余裕があるからな……」 

 口元を震わせながら強がって見せるような要。木枯らしが吹いてもおかしくないような秋の空の下、上着をレンジの端に置かれた弾薬庫に引っ掛けた彼女は、上着の下にいつも着ている黒のタンクトップに作業用ズボンと言ういでたちで誠の前に立っていた。

「一応、今日は僕達はアイシャさんの手伝いをするために来たと思うんですけど」 

「はぁ?あのアホの手伝いなんてするために来たんじゃねえよ、アタシは。あいつがアホなことしてうちの部隊に迷惑をかけないかどうか監視しに来たんだ!」 

 そう言うと、アイシャは警備部の丸刈りの新兵をどかせてレンジを占領する。そしていつものように数秒で全弾をターゲットの胸元に叩き込むと空のマガジンを取り出す。

「そうか。じゃあここで無駄に弾を消費するのも目的とは反しているわけだな?」 

 不意を突かれたマリアの一言に要は戸惑ったように視線を泳がせる。周りのマリアの部下達も射撃をやめてニヤニヤと笑いながら要を見つめていた。そしてそのまま子供のように視線を地面に落とした要は拳銃をいじりながらさびしそうな表情を浮かべていた。

「姐御が言うんじゃしかたねえな。ちょっと待ってろ、片付けたら行くから」 

 まるで子供のように口を尖らせながら自分が使っていたレンジにとって返す要。そのまま保管庫にかけていた上着を着込み、素早くガンベルトを巻いてテーブルに弾薬が空の拳銃のマガジンを置く。

 その動作を一通り見ていた誠はそのまま彼女の隣に座った。要は相変わらず拗ねた子供のような表情で、誠に視線を合わせようともせずただ弾薬の入った箱から40S&W弾を一発づつ取り出してはマガジンに込めていく。

 その隣のレンジに置かれた丸椅子に腰掛けた誠は黙ってその様子を見つめていた。

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