突然魔法少女? 66
上着をつっかけ、ベルトを巻いて誠はそのまま実働部隊の詰め所に向かった。
「すいませんさっきは……」
誠はそこまで言って口を閉ざした。目の前に立って金色の飾りの付いた杖を振り回しているのは第一小隊二番機パイロット、ナンバルゲニア・シャムラード中尉である。彼女が着ている白とピンクの鮮やかな服をデザインしたのが誠だけに、それが目の前にあるとなると急に気恥ずかしさが襲ってきた。
「おい、神前。アタシはこれでいいのか?」
黒っぽいその小さな肩を覆うような上着とスカートの間から肌が見える服を着込んでいる少女に声をかけられてさらに誠は驚く。
「作ったんですか?あの人達」
誠は運行部の人々の勤勉さにあきれ果てた。そして誠の机に置かれたラーメンを見つめた。
「あ、もう昼なんですね」
そう言う誠に白い目を向けるのは彼の正面に座っている要だった。
「もう過ぎてるよ。伸びてるんじゃないのか?」
要の言葉に誠はそのままラップをはずしてラーメンを食べ始める。汁を吸いすぎた麺がぐにぐにと口の中でつぶれるのがわかる。
「伸びてますね、おいしくないですよ」
「ああ、あそこ。大分……味が落ちたな」
そう言いながらじっと要は誠を見つめている。隣の席のカウラも誠に付いていたために冷えたチャーハンを口に運んでいた。
「おい、神前。なんとかならねーのかよ!」
「何がです?」
麺を啜りながら顔を向ける誠にもともと目つきの悪いランの顔が明らかに敵意を含んで誠をにらみつけている。着るまでは意識しなかった羞恥心で赤くなりながら手足の派手なアクセサリーを見てはため息をつく。
「えー!ランちゃんかわいいじゃん!」
「そうだ!かわいいぞ!」
シャムと要がはやし立てる。それを一瞥した後、ランのさらに凄みを増した視線が誠を射抜いた。
「でも、このくらい派手じゃないと……ほら、子供に夢を与えるのが今回の映画の趣旨ですから」
「まあ、演じている二人はどう見ても自分が子供だからな」
要のつぶやきにあわせてランが手にした杖を思い切り要の頭に振り下ろした。先端のどくろのような飾りが要の頭に砕かれる。
「ああ、この杖強度が足りねーな。交換するか」
「おい!糞餓鬼!何しやがんだ!」
真っ赤になって迫る要を落ち着いた視線で見つめるラン。二人がじりじりと間合いを詰めようとしたとき、詰め所のドアが開いた。