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突然魔法少女? 64

 誠が意識を取り戻してまず見上げた天井は白く、ただ何も無く白く輝いて見えた。

「大丈夫か?」 

 覗き込んでいるのはカウラだった。

「おっお目覚めか、お姫様は」 

 医務官ドムの低い声が響く。誠は首に違和感を感じながら起き上がる。いつも要やカウラに運ばれてくる自分がどう思われているかを考えて苦笑いを浮かべる誠。

「首やっぱり痛むか?なんなら湿布くらいは出すぞ」 

 そう言うドムの表情は諦めにも近い顔をしていた。

「僕は……」 

 誠は飛んできた茶色い巨大な塊に押しつぶされて意識を失ったことを思い出した。

「まあグレゴリウス13世も悪気があった訳じゃないんだろうがな。それにしてもお前、本当にくだらない怪我とか多いな。たるんでるんじゃないのか?」 

 愚痴をこぼすドム。最近わかったことは予算の都合で専任の看護師がつかないことが彼の苛立ちの原因となっていること。事実カルテの管理や各種データの提出に彼の労力がかなり割かれていて膨大な作業量に同情したくなるほどだった。そしてそれがわかると誠も彼の愚痴に付き合うことができるようになった。

「湿布は……ここか」 

 カウラは薬品庫を慣れた手つきで開ける。

「それにしても大騒ぎだな、まあいつものことか」 

 そう言うとドムは席に戻って書物を開いた。

「そう言えばドム大尉はお子さんもいるんですよね」 

 ワイシャツのボタンをはずしながらの誠の言葉に振り返るドム。

「まあな、どうだ?今回のは子供向けだろ?」 

 家族の話を振られて珍しくドムがうれしそうに振り向く。

「まあ子供向けというより大きなお友達向けだな」 

 カウラはそう言いながら首をさらけ出す誠のどこに湿布を張るかを決めようとしていた。

「だろうけど、去年の悪夢に比べたらな……」 

 そう言うドムの顔には泣き笑いのような表情が浮かんだ。それを見て誠は意を決してたずねることにした。

「そんなに去年のはひどかったんですか?」 

 ドムの顔が引きつる。乾いた笑いの後、そのまま目をそらして机の上の書物に向き合うドム。カウラも冷ややかな笑いを浮かべながら口ごもった後、ようやく話し始めた。

「確かに去年の作品はひどかった。我々の任務を映像化したわけだが……」 

「まあつまらなくはなるでしょうね。訓練とかはまだ見てられますけど、東和警察の助っ人とか……もしかして駐車禁止車両の取締りの下請けの仕事とかも撮ったんですか?」 

 誠がそこまで言ったところでドムがカウラを見つめた。カウラはしばらくためらった後、表情を押し殺した顔で誠に言った。

「確かにそれもあるが、内容の半分以上をキムの仕事だけに絞り込んだんだ」 

 キム・ジュンヒ少尉。保安隊技術部小火器管理の責任者であり、隊の二番狙撃手である。誠はしばらくそれが何を意味するかわからずにいた。

「それがどうして……」 

 そう言う誠を見てカウラとドムは顔を見合わせた。

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