突然魔法少女? 62
「そんなこと無いわよ。小夏ちゃんには快諾してもらっているわ、本人の出演も含めて」
そのアイシャの言葉が要には衝撃だった。一瞬たじろいた後、再びじっと画面を見つめる。そして今度は襟元からジャックコードを取り出して、端末のデータ出力端子に差し込む。あまりサイボーグらしい行動が嫌いなはずの要が脳に直接リンクしてまでデータ収集を行う姿に誠もさすがに呆れざるを得なかった。
「本当に疑り深いわねえ。まったく……!」
両手を手を広げていたアイシャの襟首を思い切り要が引っ張り、脇に抱えて締め上げる。
「なんだ?北里アイシャ?シャムの学校の先生で……カウラと誠をとりあっているだ?結局一番普通でおいしい役は自分でやろうってのか?他人にはごてごてした被り物被らせて……」
「ちょっと!待ってよ要!そんな……」
誠もカウラも要がそのままぎりぎりとアイシャの首を締め上げるのを黙ってみている。
「アイシャさん、調子乗りすぎですよ」
「自業自得だな」
「なんでよ誠ちゃん!カウラちゃん!うっぐっ!わかった!」
そう言うとアイシャは要の腕を大きく叩いた。それを見て要がアイシャから手を離す。そのまま咳き込むアイシャを見下ろしながら指を鳴らす要。
「どうわかったのか聞かせてくれよ」
画面にアイシャのキャラを映し出す要。誠とカウラはその中に移るめがねをかけた教師らしい姿のアイシャを覗き込んだ。
「でも……そんなに長い尺で作るわけじゃないんなら別にいらないんじゃないですか?このキャラ」
「そうだな、別に学園モノじゃないんだから、必要ないだろ」
誠とカウラはそう言ってアイシャを見つめる。アイシャも二人の言うことが図星なだけに何も言えずにうつむいた。
「よう、端役一号君。めげるなよ」
がっかりしたと言う表情のアイシャ。その姿を見て悦に入った表情でその肩を叩く要。
「なんだ、気に入っているのか?さっきの痛い格好」
今度はカウラが要をうれしそうな目で見つめる。
「別にそんなんじゃねえよ!それより楓は……あいつは出るんだろ?」
「あ、お姉さま!僕ならここです!」
部屋の隅、そこでは運行部の隊員と一緒に型紙を作っている楓と渡辺の姿があった。
「なじんでるな」
あまりにもこの場の雰囲気になじんでいる楓と渡辺の姿に要はため息をついた。同性キラーの楓は配属一週間で運行部の全員の胸を揉むと言う暴挙を敢行した。男性隊員ならば明華やマリアと言った恐ろしい上官に制裁を加えられるところだが、同性そしてその行為があまりに自然だったのでいつの間にか運行部に楓と渡辺が常駐するのが自然のように思われるようにまでなっていた。
「お前等、本当に楽しそうだな」
呆れながら楓達を見つめる要。誠とカウラは顔を見合わせて大きなため息をついた。