突然魔法少女? 5
生垣の中に足を踏み入れると、誠の前にはどう見ても時代を間違えたとしか思えない光景が広がっていた。木に立てかけられた薙刀。転がる胴丸、烏帽子、小手、わらじ。
「おう!来たんか」
黒糸縅の大鎧を着込んでいた明石が技術部の隊員に手を借りながら鎧を脱いでいるところだった。
「まるで源平合戦でもするみたいじゃのう」
そう言って笑う明石。裏表の無い彼らしいドラ声が森に響く。
「沼沢!エンゲ!こっち来い!」
すでに着替え終えている島田が部下の名前を呼ぶ。ワイシャツを着込もうとしていた沼沢と、髪を整えていたエンゲが慌てて上官の下へと向かう。
「そう言えば吉田のアホは市民会館の方なのか?」
ようやく鎧を外して小手に手を移しながら明石が尋ねてくる。
「ああ、あの人は祭りが嫌いだとか言ってましたから」
そう言うと誠は脱いだ烏帽子と胴丸を地面に置いた。自分で次々と鎧を脱いでいく誠に感心したような表情で視線を送る明石。
「あいつが祭りが嫌い?嘘じゃろ、そりゃ。どうせあのアホのことじゃ。あの作品の最終チェックで隊長が駄目出ししたシーンをいじったりしとるんちゃうか?」
そう言いながら小手を外した明石は、部下を制止して自分で脛当てを外しにかかった。
「でも、あれ本当に良かったんですか?」
誠は恐る恐る明石に尋ねた。明石は明らかに『ワシに聞くな』というような表情で目を逸らす。
「おう!自分ひとりでやってる割には早えじゃねえか!」
その声を聞いて振り返った誠の視界には要とアイシャ、カウラが制服に着替えて立っていた。
「変態!」
「痴女よ!痴女!」
「スケベ!」
半裸の整備班員が要達に向かって叫ぶ。明石と誠はあきらめたというような顔で隊員の顔を眺めていた。
「急いで着替えろよ!上映会まで後2時間無いんだからな」
そう言って気持ちの悪い罵声を浴びせる整備員達を無視して、近くの石に腰を下ろして着替えている誠を見つめる要。
「あのー」
誠は脛当てを外す手を止めて要に目を向けた。
「なんだ?」
「少し恥ずかしいんですけど……」
そう言って視線を落とす誠。すぐさまその頭はアイシャの腕に締められた。
「何言ってるのよ、誠ちゃん。同じ屋根の下暮らしている仲じゃないの!」
ぎりぎりとヘッドロックをかますアイシャ。隣でカウラは米神に手をあててその様子を眺めていた。