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突然魔法少女? 49

「はい!誠ちゃん」 

 アイシャは誠の空になったグラスにビールを差し出す。

「オメー等……またこいつを潰す気か?」 

 本当に酒を飲んでいいのかと言いたくなるようなあどけない面立ちのランがうまそうにビールを飲みながらそう言った。見た目は幼く見えるが誠が知る限り女性士官では一番の年配者であるラン。先日要にビールを飲まされてからその魅力に取り付かれた彼女はすっかりビール党となり最近は変わったビールを取り寄せて振舞うのを趣味としていた。

「良いんですよ!こいつはおもちゃだから、アタシ等の!」 

 そう言い切って要はそばに置かれていた唐辛子の赤に染まったピザを切り分け始める。

「マジで勘弁してくださいよ……」 

 要とアイシャに注がれたビールで顔が赤くなるのを感じながらそう言った誠の視界の中で、ビールの瓶を持ったまま躊躇しているエメラルドグリーンの瞳が揺れた。二人の目が合う。カウラは少し上目遣いに誠を見つめる。そしてそのままおどおどと瓶を引き戻そうとした。

「カウラさん。飲みますよ!僕は!」 

 そう言って誠はカウラに空のコップを差し出した。誠が困ったような瞳のカウラを拒めるわけが無かった。ポニーテールの髪を揺らして笑顔で誠のコップにビールを注ぐカウラ。その後ろのアンは喜び勇んでビールの瓶を持ち上げるが、その顔面に要の蹴りが入りそのまま壁際に叩きつけられる。

「西園寺!」 

 すぐに振り返ったカウラが叫ぶ。要はまるで何事も無かったかのように自分のグラスの中のラム酒を飲み干していた。

「西園寺。オメーはなあ……やりすぎなんだよ!」 

 ランはそう言うと要の頭を叩いた。倒れたアンにサラとパーラが駆け寄る。

「大丈夫?痛くない?」 

「ひどいな、西園寺大尉は」 

 サラとパーラに介抱されるアンに差し入れを運んできた男性隊員から嫉妬に満ちた視線が送られている。誠はこの状況で自分に火の粉がかかるいつものパターンを思い出し、手酌でビールを注ぎ始めた。

「お姉さま。僕も今回はやっぱり要お姉さまが悪いと思います!アン、大丈夫そうだな」 

「そうですね」 

 味方になると思っていた楓と渡辺。第三小隊の隊長としての立場をわきまえている楓まで敵に回り、要はいらだちながら再びラム酒をあおった。

「よく飲むなあ……少しは味わえよ」 

「うるせえ!餓鬼に意見されるほど落ちちゃいねえよ!」 

 ランから文句を言われている要だが、そっと彼女は切り分けたピザを誠に渡した。

「あ、ありがとうございます」 

「礼なんて言うなよ。そのうちオメエが暴れだして踏んだりしたらもったいないからあげただけだ」 

 そう言う要の肩にアイシャが手を寄せて頷いている。その瞳はすばらしい光景に出会った人のように感嘆に満ちたものだった。

「なんだよ!」 

「グッジョブ!」 

 思い切り良く親指を立てるアイシャに要はただそのタレ目で不思議そうな視線を送っていた。

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