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突然魔法少女? 47

『会議室』、『図書館』、『資料室』などと美化して呼ばれることが多いこの寮の壁を三つぶち抜いて作られた部屋にアイシャ達は集合していた。モニターが汚い寮の壁と不釣合いな清潔感をかもしだす。周りには通信端末やゲーム機、そして漫画や写真集が転がっている。この部屋はアイシャの寮への引越しによりさらにカオスの度合いが高まっていた。

 以前は男子寮らしいエロゲーの集積所だったこの部屋はアイシャによりもたらされたさらに多数のエロゲーと乙女ゲーが女性隊員までも呼び込み、拡張工事によりさらにゲームや同人誌が積み上げられると言う循環を経て保安隊の行きつけのお好み焼きの店『あまさき屋』と並ぶ一大拠点に成長していた。

「カウラ、最近騒がないのね」 

 部屋に入るとすぐに端末を占領してゲームを始めようとしたところをサラに止められて不機嫌そうにしていたアイシャがそう言いながら端末の電源を落す。カウラは最初のうちは野球部のミーティングをここでやろうとするアイシャや要を露骨に軽蔑するような目で見ていたが、今では慣れたというようにたまに山から崩れてきたエロゲーを表情も変えずに元に戻すくらいのことは平気でするようになっていた。

 だが、この部屋に慣れていない住人も居た。

 近くのマンションに暮らしているがこの部屋に入るのが今日がはじめてと言う嵯峨楓少佐と渡辺かなめ大尉だった。

「クラウゼ少佐。この部屋にはいくつこういうものがあるんだ?」 

 そう言って人妻もののエロゲーのパッケージをアイシャに見せる楓。照れながらちらちらとヌード写真が開かれたままになっている週刊誌に視線を向ける渡辺。

「楓ちゃん、なに硬くなってるのよ。仕事が終わったんだからアイシャでいいわよ」 

 そう言いながらパーラから渡された書類を並べるアイシャ。

「そうか、じゃあ僕のことも楓と呼び捨ててもらった方が気が楽なんだ。ちゃんづけは……」 

 そう言いながら要を見つめる楓に要は身をそらした。

「ああ、アタシのお袋か。まあ、あの生き物の前じゃ叔父貴も『新ちゃん』だからな」 

 そう言いながらすでに要の手にはラム酒の瓶が握られていた。誠は引きつる要の表情を見逃さなかった。噂に聞く西園寺康子。要の母にして嵯峨の戸籍上は姉、血縁では叔母に当たる人物。薙刀の名手として知られ、胡州に亡命した軟弱な廃帝と思われていた嵯峨を奸雄と呼ばれるまで鍛え上げた女傑だった。

「何持ってんのよ!」 

 アイシャの言葉に要はむきになったように瓶のふたを取るとラム酒をラッパ飲みした。

「どうせまともな会議なんてする気はねえんだろ?それにあちらは今はシャム達はあまさき屋でどんちゃん騒ぎしているみたいだぞ」 

 そう言うと要は珍しく自分から立ち上がって通信端末のところまで行くと襟元のジャックから通信ケーブルを端末に差し込んでモニターを起動させる。そこには時間を逆算するとまだ三十分も経っていないだろうというのに真っ赤な顔のレベッカにズボンを下ろされかけている西の姿があった。

「やばいな誠。脱ぎキャラがお前以外にも出てきたぞ」 

 ニヤニヤ笑いながら誠に飛びついてヘッドロックをかける要。130キロ近いサイボーグの体に体当たりを食らって誠は倒れこんだ。視線をカウラに向ける。明らかに誠と要を意識しているが、わざとらしくいつもは手も出さないエロゲーのパッケージを手にとって眺めている。

 そして今度は楓に目を向けた。こちらはいつ火がつくかわからないと言うような殺気を込めた視線が送られてきていた。

「なるほどねえ。あっちが動いていないならこちらから何かを仕掛けるわけには行かないわね」 

 あっさりとそう言ったアイシャだが、この部屋に居る誰もがこのままでアイシャが終わらないと言うことは分かっていた。

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