突然魔法少女? 40
「楓ちゃん!」
そう叫んだアイシャはがっちりと楓の手を握り締めた。
「その思い受け止めたわ!でも今回はあまり出番作れそうにないわね」
「おい!今回ってことは二回目もあるのか?」
要が呆れながらはき捨てるように口走る。そんな要を無視してアイシャはヒロイン、シャムのデザインを始めている誠の手元を覗き込んだ。その誠の意識はすでにひらめきの中にあった。次第にその輪郭を見せつつあるキャラット・シャムの姿にアイシャは満面の笑みを浮かべた。
「やっぱり誠ちゃんね。仕事が早くて……」
「クラウゼ少佐!」
叫んだのは島田だった。アイシャは呼ばれてそのまま奥のモニターを監視している島田の隣に行く。
「予想通り来ましたよ、シャムさんの陣営の合体ロボの変形シーン……こりゃあ姐御が仕切ってますね」
頭を掻く島田。アイシャは渋い表情で画像の中で激しく動き回るメカの動画を見つめていた。
「メカだけで勝てると思っていたら大間違いと言いたいところだけど……あちらには吉田さんがいるからねえ。それにああ見えてレベッカは結構かわいい衣装のデザインとか得意だから……」
「あちらはレベッカさんとシャムさんですか」
下書きの仕上げに入りながら誠が口を開く。そこに描かれた魔法少女の絵にカウラは釘付けになっていた。アイシャのデザインに比べて垢抜けてそれでいてかわいらしいシャムの衣装にカウラは頷いた。
「でもまあ、合体ロボだとパイロットのユニフォームとかしか見るとこねえんじゃないのか?」
そう言った要の顔を見て呆れたように首を振るアイシャ。
「あなたは何も知らないのね。設定によっては悲劇のサイボーグレディーとか機械化された女性敵幹部とか情報戦に特化したメカオペレーターとかいろいろ登場人物のバリエーションが……」
「おい、アイシャ。それ全部アタシに役が振られそうなキャラばかりじゃねえか!」
「え?大丈夫よアタシの頭では全部構想はできているんだから」
得意げに胸を張るアイシャに要は頭を抱える。
「オメエのことだからもうすでに設定とかキャスティングとか済ませてそうだな、教えろよ」
挑発的な表情でアイシャを見つめる要。だが、アイシャはいつものように要から視線を外すと再び誠の隣に立った。
「やっぱりいつ見ても仕事が早いわよねえ。この杖、やっぱり色は金色なの?」
アイシャはドリンク剤のふたをひねると誠の隣に置いた。夏コミの時と同じく誠はその瓶を手に取るとそのまま利き手の左手で作業を続けながらドリンク剤を飲み干した。
「ちょっと敵役の少女と絡めたデザインにしたいですから。当然こちらの小さい子の杖は銀色でまとめるつもりですよ」
ドリンク剤を飲み干すと、誠は手前に置かれたアイシャのラフの一番上にあった少女の絵を指差した。
「これってもしかして……」
「ああ、それはクバルカ中佐よ。あの目つきの悪さとか、しゃべり口調とか……凄く萌えるでしょ?」
アイシャに同意を求められたカウラは首をひねった。誠の作業している隣では楓と渡辺がアイシャが作ったキャラクターの設定を面白そうに眺めていた。