突然魔法少女? 4
「大変ねえ、なにか手伝う?」
呆然と上品なお姫様を演じている要を見つめていた誠にそう言ってきたのは小手を外してくれる順番待ちをしていたアイシャだった。
「ああ、お願いします。そこのうつぼを奥の箱に入れてください」
「いいわよ」
そう言って弓を抜き終わったうつぼを取り上げたアイシャだが、まじまじとそれを覗き込んでいる。
「私はあまり詳しいこと知らないんだけど、高いんでしょ?これ」
そう言いながら手にしたうつぼを箱の仲の油紙にくるむアイシャ。
「まあな。それ一つでテメエの十年分の給料くらいするんじゃないか?」
脛当てを外してもらいながらにやにやと笑う要。地が出てはっとする要だが、まるでそれがわかっていたように薫は笑顔を浮かべていた。
「そんなにしないわよ。嵯峨君に聞いたら全部最近の模造品だって言ってたわよ。じゃあここから先はご自分でね」
そう言って主な結び目を解いた要を送り出す薫。すぐさまアイシャが立ち上がって薫に小手を外してもらう。
「模造品だって高けえんだぜ。さすがは嵯峨家。胡州一の身代というところか?」
要はそう言うと誠の隣で兜の鍬形を外していた。
「そう言えば叔父貴はどうしたんだよ。それに茜や楓は?」
「ああ、嵯峨君は外で整備班の胴丸を脱がせてたわよ。それに茜さんと楓さんは自分で脱げるからって……」
ちょうどそんな噂の双子が保安隊の制服で更衣室に入ってくる。
「なんだ、要お姉さまはもう脱いでしまったのか……」
ぼそりとつぶやいて瞳を潤ませて要を見つめる楓に思わず後ずさる要。
「神前君、あなたも着替えなさいよ。それと薫さんも私が代わりますから休んでください」
そう言ってアイシャの左腕の小手を外しにかかる茜。
「そうね、誠。外に出てなさい」
「いいんですよお母様、私は見られ……ごぼ!」
満面の笑みを浮かべて話し出した胴を脱いだばかりのアイシャの腹に要のボディブローが炸裂する。
「邪魔だ!出てけ」
そう言ってまた部屋の隅に戻り、カウラが着ていた大鎧を油紙に包む要。さらに奥のテーブルで制服姿のカウラと談笑している大鎧を着たままのサラとパーラの冷たい視線が誠を襲う。
「それじゃあ隊長のところに行ってきますね」
そう言って二月の寒空の中に飛び出した誠。
先ほどまでの祭りの興奮で寒さを忘れていた誠だが、最高の見せ場の流鏑馬も終わって豆まきの準備に入った人々の中に取り残されると寒さは骨に染みてきた。テントを出るとさすがに明石も着替えに向かったようで、森の中で談笑しながら鎧を脱いでいる整備班の中に混じろうと誠は歩き始めた。