突然魔法少女? 36
肩で息をしながら誠は実働部隊の待機室に飛び込んだ。ようやく落ち着きを取り戻した詰め所の端末に座る隊員達。明らかに呆れたような視線が誠に注がれる。
「どうしたんだ?すげえ汗だぞ」
椅子の背もたれに乗りかかりのけぞるようにして入り口の誠を見つめて要が聞いてくる。誠はただ愛想笑いを浮かべながら彼女の隣の自分の机に到着した。
「慌ててるな。ちゃんとネクタイとベルトを締めろ」
カウラは目の前の目新しい端末を操作しながら声をかけてくる。
誠は周りを見渡しながらネクタイを締め直した。楓と渡辺がなにやら相談しているのが見える。そして当然のことながらアンの席は空いていた。吉田とシャムが席を外しており、退屈そうにランが目の前に広げたモニターの中で展開されている模擬戦の様子を観察していた。
「すいません、遅れました」
おどおどと入ってくるアンが向ける視線から避けるように誠は机にへばりつく。第三小隊設立以降、毎朝このような光景が展開されていた。
「退屈だねえ」
そう言って肩をくるくるとまわす要にランの視線が注いがれている。
「なら先週の道路の陥没事故の報告書あげてくれよ」
ランの一言に振り向いた要が愛想笑いを浮かべている。
「おい、神前。警察署から届いた調査書はお前のフォルダーに入れてあったんだよな」
そう言いながら端末をいじる要。明らかにやる気が無いのはいつものことだった。誠は仕方なく自分の端末を操作してフォルダーのセキュリティーを解除した。
「サンキュー」
言葉とは裏腹に冴えない表情の要。カウラの要に向ける視線が厳しくなっているのを見て、誠はまたいつもの低レベルな口喧嘩が始まるのかと思ってうつむいた。
「諸君!おはよう!」
妙に上機嫌にシャムが扉を開く。その後ろに続く吉田は明らかにシャムに何かの作業を頼まれたと言うような感じで口笛を吹きながら自分の席につく。
「何かいいことでもあったのか?」
ランの言葉に一瞬頷こうとしてすぐに首を振るシャム。
「馬鹿なこと始めたんじゃねえだろうな」
要が退屈を紛らすためにシャムに目を向ける。そんな要を見つめるカウラの視線がさらに厳しいものになるのを見て誠はどうやれば二人の喧嘩に巻き込まれずに済むかということを考え始めた。
そんな中、乱暴に部屋の扉が開かれた。
駆け込んできたのはアイシャだった。自慢の紺色の長い髪が乱れているが、そんなことは気にせずつかつかと吉田の机まで進んできて思い切りその机を叩いた。
「どういうことですか!」
アイシャのすさまじい剣幕に口げんかの準備をしていた要がアイシャに目を向けた。
「突然なんだよ。俺は何も……」
「何で在遼州アメリカ軍からシャムちゃん支持の大量の投票があったかって聞いてるんですよ!」
アイシャの言葉に部屋は沈黙に包まれた。呆れる要。カウラは馬鹿馬鹿しいと言うように自分の仕事に集中する。ランは頭を抱え、シャムはにんまりと笑みを浮かべていた。




