突然魔法少女? 33
ハンガーの前ではちょうど先に車を降りたアイシャがアンケート用紙を西高志兵長から受け取っているところだった。
「早いねえ、なんだ?まさか組織票とか……」
そう言う要の言葉に引きつった笑みを浮かべる西。
「ああ、うちはシャムの案で行くことにしたから」
きっぱりとアイシャにそう言うとそのままハンガーの奥へと消えていく明華。
「技術部の組織票か。これは合体ロボで決まりかな」
そう言いながら右手で額をつついているカウラ。だが、アイシャの顔には不適な笑みが張り付いていた。
「おい、アイシャ。技術部の組織票が動いたんだ。諦めろ」
要はそのままアイシャの肩に手をやった。
「ふっふっふ……」
声に出して不気味な笑い声を出すアイシャに少し引いた表情を浮かべる要。
「とりあえずあなた達の部屋まで行くわよ」
アイシャはそのまま奥の階段へとまっすぐに向かっていく。
「馬鹿だねえ。人数的にはあと数を稼げるのは警備部ぐらいのもんだぜ。しかもマリアの姐御が組織票でアイシャに協力するなんてことはねえだろうが」
ぶつぶつとつぶやく要。誠から見ても要の言うことが正解だった。その割にはアイシャの表情は明るすぎた。
「はい!管理部は全員一致でファンタジー路線に決めましたので!」
階段を上りきったところでいきなりカウラにアンケートを渡す菰田。だが、大勢が決まったと思っているカウラは愛想笑いの出来損ないのような微妙な笑みを浮かべてそれを受け取っただけだった。
「菰田、諦めろよ。もう合体ロボで決まりみたいだから。それに……」
要の響く声に気づいたのか、突然実働部隊詰め所の扉が開いてシャムが飛び出してきた。
「アイシャ!ずるいよ!」
そう言ってアイシャの首にぶら下がろうとするシャム。
「ふっふっふはっはっはー!」
大爆笑を始めたアイシャに誠も要もカウラも何が起きたのかと戸惑いの視線をシャムに向けた。小さなシャムが両手を大きく広げて威嚇するようにアイシャを見つめている。その様はあまりに滑稽で誠は危うく噴出すところだった。
「だって同盟司法局とか東和国防軍とかから次々魔法少女支持の連絡が届いてるんだよ!確かに保安隊だけしか投票できないって決まってないけどさ」
シャムの言葉に誠は高笑いを続けるアイシャを覗き込んだ。
「この馬鹿ついに他の部隊まで巻き込みやがった」
呆れて立ち尽くす要。カウラはその言葉を聞かなかったことにしようとそのまま奥の更衣室へ早足で向かった。
「だってあのアンケートの範囲の指定は無かったじゃないの。そうよ、勝てばいいのよ要するに!」
アイシャはそう言うとそのまま誠の右手を引っ張ってカウラに続いて歩き続ける。
「何で僕の手を握ってるんですか?」
突然の状況の変化についていけない誠。だが、そんな誠にアイシャは向き直ると鋭く人差し指で彼の顔を指差した。
「それは!誠ちゃんが魔法少女デビューを果たすからよ!」
先に更衣室の前で振り返ったカウラが凍りついた。要が完全に呆れた生き物でも見るような視線を送ってくる。シャムは手を打って納得したような表情を浮かべる。
誠はなにが起きたのかまったくわからないと言うようにぽかんと口を開けていた。