突然魔法少女? 32
「なんですか?それは?」
翌日、少しばかり早く隊舎に到着した誠が目にしたのは、郵便受けに大量に差し込まれた封筒を手にしたカウラだった。
「さあ……」
首をひねるカウラの手から一枚それを引き抜く要。そして彼女は思い切り大きなため息をつくとそれをカウラの手に戻した。
「誰宛?それ」
アイシャは興味深げにそれを眺めるが差出人の項目を見たとたん興味を失ったようにハンガーに向けて歩き出した。
「カウラ、それ焼いとけ」
そういい残して立ち去る要。
「誰から来たんですか?それ」
そう言いながら誠はカウラの手にある封筒を一枚手にした。それは保安隊運用艦『高雄』の機関室責任者槍田司郎大尉からのものだった。誠の表情に引きつった笑いが浮かぶ。他の封筒もすべて槍田大尉の部下である機関室の技術下士官の名前が書き連ねられている。
「見ないでも内容は分かるなこれは。本当に焼こうか?」
カウラの微妙な表情で誠を見つめている。
槍田司郎貴下の機関室の面々は管理部の菰田とはベクトルを反対側に向けた方向で誠の苦手な分野の人々だった。ともかくひたすら軟派な集団だった。室長の槍田自信も火器管制官であるパーラと付き合っていながら、『高雄』の母港のある新港基地近くの女子高生との不適切な関係で危うく逮捕されかけると言う事件があったほどのスケベ集団である。
当然、ここ豊川基地の女性部隊員にはひたすら評判が良くない面々だった。
「ちょっと見るだけでも……」
そう言って誠は一枚の封筒を開けた。
『団地妻モノ希望』
誠はその文字を見るとカウラに封筒を返した。そしてもう一度別の封筒を開く。
『女子校生モノ希望』
今度こそと別の封筒を開く。
『とりあえずエロければオールOK』
誠はそのまま封筒をカウラに返した。
「あの人達にはちゃんと候補は決まってるって吉田さんが送ってるはずですよね」
そう言う誠にカウラは首を横に振った。
「なにしてるの?あんた達」
ハンガーから出てきた明華。昨日の説教に疲れたのかあまり元気が無い彼女がカウラの手にある封筒の山に目をつけた。
「なにそれ?」
近づいてくる明華。その後ろからは島田がコバンザメのようについてくる。
「機関室の面々から昨日のアンケートの回答が届いて……」
「すぐに焼きなさい!」
カウラの言葉を聞くとすぐにそれだけ言って明華はハンガーに消えた。
「知らねえぞ、槍田の旦那も……カウラさん。それうちで処分しますから」
そう言って島田は封筒の束を預かる。
「あいつ等は何とかならないのか?」
カウラは呆れたように島田に声をかけるが、白々しい笑みが島田の顔に浮かんだだけだった。