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突然魔法少女? 31

 廊下にぼんやりとたたずむのはグレゴリウス13世だった。そのしょんぼりとした瞳がアイシャと誠に注がれる。

「わう」 

 悲しげにつぶやくグレゴリウス13世の後頭部に延髄切りが叩き込まれた。驚いて振り返るグレゴリウス13世だが、明らかにランからしつけられていて黙ってうなだれる。

「誰のせいだ?え?」 

 誠はグレゴリウス13世の後ろを覗き込むと、水のなみなみと入れられたバケツを両手に持っている要がいた。

「なに、要ちゃんすごく古典的な罰ゲームね」 

 そう言いながら要を携帯端末で撮影しようとしたアイシャの顔面に要の蹴りが炸裂する。

「おい、写真撮ったら殺すからな!」 

 いつものタレ目が殺意を帯びていることに気づき、誠は愛想笑いを浮かべながら詰め所の扉を開く。

「おう!ご苦労さん」 

 明石はそう言いながら二人を迎えた。ひしゃげた椅子が一つ、その隣には折れた竹刀が放置されている。

「ランちゃんまたやったの?」 

「おい、アイシャ。上官にちゃん付けか?」 

 ロナルドの不在を良い事に彼の席を占領して端末を叩いていたランが視線をアイシャに向ける。

「いえいえ、中佐殿の判断は実に的確であります」 

 完全に舐めきった口調でランをからかうアイシャだが、ランはそうやすやすと乗るわけも無く、すぐに視線を端末の画面に移した。

「楽しみだね!どれに決まるか!」 

 ニコニコ笑いながら吉田の向かいの席に座ってアンケート用紙の裏に漫画を書いているシャム。見た目はランより少し年上中身は中学生と言うシャムだが、書いている戦隊ヒーローの絵は躍動感のある見事なものだった。

「俺はどれでもいいよ。でもさあ、誰が脚本書く……アイシャか?」 

 足を机の上に投げ出してぼんやりと天井を眺めていた吉田の視線がアイシャに向かう。明らかにアイシャは自分が書くんだ!と言うように胸をはっていた。

「僕は出ないぞ」

 ぼそりとつぶやくのは楓だった。 

「えー!楓ちゃんが出てくれないと困っちゃうじゃない」 

 第三小隊の机の一群でポツリとつぶやいた楓にアイシャがすがり付いていく。自分が女であるにもかかわらず『フェミニスト』を公言している楓。アイシャに身体を擦り付けられると顔を赤らめて下を向いてしまう。

「困るもなにもこれは職務とは関係が無いじゃないか!」 

「それは違ごうとるんとちゃうか?」 

 そう言ったのは黙って静観を決め込んでいた明石だった。こういうことには口を出さないだろうと言う上官の一言に楓が顔を上げて明石を見る。

「何も暴れることだけがウチ等の仕事やないで。日ごろお世話になっとる町の方々に感謝してみせる。これも重要な任務や」 

「そうそう、それもお仕事なんだよー」 

 風船ガムを膨らませながら投げやりに言葉を継いだ吉田。

「ですが、僕は……」 

「大丈夫!どのシリーズでも私が楓ちゃんのかっこよく見える見せ場を作ってあげるから。そしたら要ちゃんも喜ぶわよ!」 

「喜ばねえよ!」 

 半開きの扉から顔を出す要。だが次の瞬間にはその額にランの投げたボールペンが突き刺さった。

「立たされ坊主はそのまま立ってろ」 

 しぶしぶ要は顔を引っ込めて、足で器用に扉を閉めた。だが一人晴れやかな顔でまとわり付くアイシャの身体をがっちりと握り締めている楓だけが晴れやかな表情で何も無い中空を見つめていた。

「お姉さま!要お姉さま!僕はやりますよ!お姉さま!」 

 まず誠が、続いてラン、カウラ、明石、吉田。次々と恍惚の表情を浮かべる楓に気づく。

「大丈夫か?正親町三条?」 

「楓様……」 

 家督相続前の苗字を呼んでみる明石。心配そうに見上げるかなめ。

「やります!なんでも!はい!」 

 楓はそう言うとアイシャを抱擁した。

「あ!えー!ちょっと!離してってば!」 

 抱きしめられて顔を寄せてくる楓を避けながらアイシャが叫ぶが、彼女を助ける趣味人は部隊にいないことを誠は知っていたので黙ってそのまま押し倒されそうになるアイシャに心で手を合わせていた。

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