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突然魔法少女? 3

 仕方なく生垣の中を覗いた誠の視界に入ったのは少年だった。そして周りを見回す彼の着ている中学校の学ランの襟の校章には見覚えがあった。

「ちょっとすいません。僕が探してきますよ」 

 そうカウラ達に言うと誠は少年の後をつけた。

 生垣をすり抜けてどんどん森の中を進む少年。誠は彼のつけている校章から保安隊のたまり場であるお好み焼きの店「あまさき屋」の看板娘、家村小夏の同級生であるとあたりをつけた。

「遅いぞ!宮崎伍長!ちゃんと買ってきただろうな!」 

 そう言って少年を叱りつけたのは確かに小夏である。そして隣にメガネをかけた同級生らしい少女と太った男子生徒。そしてその中央にどっかと折りたたみ椅子に腰掛けているのは他でもない、緋色の大鎧に派手な鍬形の兜を被ったランだった。

「クバルカ中佐!何やってるんですか?」 

 声をかけられてしばらくランは呆然と誠を見ていた。しかし、その顔色は次第に赤みを増し、そして誠の手が届くところまで来た頃には思わず手で顔を覆うようになっていた。

「おい!」 

 そう言うと130センチに満たない身長に似合わない力で誠の首を締め上げた。

「いいか、ここでの事を誰かに話してみろ。この首ねじ切るからな!」 

 そう言うランに誠は頷くしかなかった。

「小夏!あの写真は誰にも見せるんじゃねーぞ!」 

「わかりました中佐殿!」 

 そう言って敬礼する小夏。彼女の配下らしい中学生達も釣られるようにして敬礼する。

「もうそろそろ時間だろうとは思ってたんだけどよー、どうも餓鬼共が離してくれねーから……」 

 ぶつぶつと文句を言いながら本部への近道を通るラン。獣道に延びてくる枯れ枝も彼女には全く障害にはならなかった。本殿の裏に設営された本部のテント。そこに立っている大柄な僧兵の姿に思わずランと誠は立ち止まった。

 どう見ても武蔵坊弁慶である。

「なんじゃ?誠。アイシャ達が探しとったぞ」 

 武蔵坊弁慶がそう言った。保安隊実働部隊の前隊長で、現在は同盟司法局で調整担当のトップを勤めている明石清海中佐は手にした薙刀を天に翳して見せる。

「着替えないんですか?」 

 そう言う誠にしばらく沈黙した明石だがすぐに気が変わったとでも言うように本部に入っていった。

「それじゃあアタシ等もいくぞ」 

 ランの言葉につられるようにして本部のテントに入る誠。

「良い所に来たわね誠!とりあえず鎧を片付けて頂戴」 

 そう言ったのは誠の母、神前薫しんぜんかおるだった。剣道場の女当主でもある彼女はこう言うことにも通じていて、見慣れた紺色の稽古着姿で手際よく鎧の紐を解いていく。

「俺、この格好なんだけど……」 

「胴丸なら自分で脱げるでしょ?文句は言わないで手を動かして!」 

 そう言って要の小手を外していた。

「いつもお母様にはお世話になってばかりで……」 

 要の声に着替えを待っているカウラ達は白い目を向ける。いつものじゃじゃ馬姫の日常などをすっかり隠し通そうと言うつもりで要は同盟加盟の大国胡州帝国宰相の娘、四大公家の跡取りの上品な姫君を演じていた。隊で一番ガサツ、隊で一番暴力的、隊で一番品が悪い。そう言われている要だが、薫の前ではたおやかな声で良家の子女になりきっている。

 誠からの話で要の正体を知っているはずの彼女は笑顔で見上げながら手を動かす。そんな母が何を考えているのか誠には読めなかった。

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