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突然魔法少女? 26

「じゃあ、あとは上の茜さんのところと実働部隊と管理部だけね」 

 そう言いながら意気揚々と階段を上がるアイシャ。

「そう言えばよう。この階段上がるの久しぶりだな」 

 要がそんなことを口にした。日中とはいえ電気の消された北側の階段には人の気配も無く、初冬の風が冷たく流れている。

「私は時々上るぞ。まあ確かに出勤の時は直接ハンガーに顔を出すのが習慣になっているからな、私達は」 

 カウラも頷きながらひやりとするような空気が流れる寒色系に染められた階段を上る。彼女達の言うように、誠もこの階段を上ることはほとんど無かった。上がればすぐ更衣室であり、本来ならそれなりに使うはずの階段。アイシャのいる運行部の前の正面玄関のそばにカウラのスポーツカーが毎朝止まるのだから、それで通う誠と要、そしてカウラとアイシャにとって駐車場から更衣室にはこちらを使う方がはるかに近道だった。

「まあ、それだけ整備の人達とのコミュニケーションが取れているから良いんじゃないの?そう言えば私も誠ちゃんの家にお世話になるようになってからだわね、整備のメンバーの顔と名前が一致するようになったの」 

「神前の家じゃねえだろ!ありゃ元は保安隊の男子寮だ」 

 アイシャは要の突っ込みを無視しながら階段を上りきり、踊り場の前に張られたポスターを見る。

『ストップ!喫煙!ニコチンがあなたの心臓を!』 

 そう書かれたポスターとその隣の扉。じっとアイシャが要を見たのは要のヘビースモーカー振りを非難してのことなのだろう。要はまるっきり無視すると言う構えで誠のうち腿に軽く蹴りを入れる振りをしている。

「そう言えばドクターのってあるの?」 

 アイシャはそう言いながら後に続いてきた要と誠の顔を見つめる。

 保安隊付きの医務官。ドム・ヘン・タン大尉。小柄で気さくな軍医だが、健康優良児ぞろいの保安隊では健康診断の時にしか活躍しないと思われていた。

「あるんじゃないですか?それに今朝会いましたよ、男子トイレで。もしはぶられたら怒るでしょうから……」 

 誠のその言葉に不思議そうな顔をする要。そのままノックもせずに扉を開いた誠はぼんやりと天井を見上げているドムを見つめることになった。

「おう、先生。元気か?」 

 要の声でようやく状況をつかめたと言うような表情を浮かべて手にしていた競馬雑誌をデスクに置くドム。

「お前等も大変だねえ……さっき吉田から連絡があった奴か……うちに電話して決めてもらうよ」 

 そう言いながら誠からアンケート用紙を受け取る。

「でも本当にこれでいいのか?」 

 ドムはシンやマリアほどではないが常識人である。一応所帯持ちなのでそれなりの体面もある。

「そう言えば先生の家って娘さんが……」 

「息子が二人だ」 

 アイシャの言葉をさえぎるように言うドム。その視線はアンケート用紙と誠を行ったり来たりしていた。

「まあいいや、どうせ次があるんだろ?早く行けよ」 

 そう言って再び競馬情報誌を手に取るドム。追い出されるようにして誠達は男女の更衣室が並ぶ廊下へと放り出された。

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