突然魔法少女? 159
「ったく……元気だねえ」
「隊長」
ぬるい調子の声に誠が振り向くと、まだ嵯峨は大鎧を身に着けたまま控え室に腰をかけていた。
「いたんですか?」
「いたよ?いちゃわるいのか?」
そう言いながら缶コーヒーを飲む姿は実にシュールに見えた。
「あれ、叔父貴の指示か?シャムとランのラブストーリー……」
「あのなあ、俺がそんな指示出すと思うか?こいつの独走だ」
そう言って嵯峨が吉田を指す。
「だってマニア向けにしろって言ったのは……」
「知らない、聞こえない」
吉田のいい訳に耳をふさぐ嵯峨。
「きっかけはやはり隊長じゃないですか」
誠の言葉に困った顔をする嵯峨。
「そんな顔したって無駄だよなー」
「うん!」
恐る恐る嵯峨が振り返るとそこにはシャムとランが立っていた。
「俺はマニアックにしろって言っただけで……」
「聞く耳持たねえよ!」
「問答無用!」
そうして二人で嵯峨の兜を杖でぽかぽか殴る。
「馬鹿!コイツに傷ついたら!」
嵯峨はそう言うと立ち上がって逃げる。それを追いかけるラン。急な展開についていけなかった誠だが、さすがに止めようと思って立ち上がる。
フロアーを逃げたはずの嵯峨を追って出た誠。そこには地味な服を着た集団に囲まれて立ち止まって助けを求めるような視線を送るランがいた。
「君……かわいいね……写真を一枚」
「あのーサインはしてもらえますか?」
「出来ればラストの台詞を……」
怪しげな一団が携帯端末を手にランを取り囲んでいる。
「はいはーい。うちの娘に手を出さないでねー!順番で写真撮影を……」
「馬鹿野郎!」
その場を仕切ろうとしていたアイシャにランは思い切り延髄斬りを食らわせた。