突然魔法少女? 158
『そうよ!またきっと!会おうね!ランちゃん』
『ああ、ぜってー会いに来るからな!』
画面の中の白い魔法少女と赤い魔法少女。シャムとランがそう叫びながら次元を超えていく。シャムの肩に手を乗せる小夏。一人涙をぬぐう要。そしてFINの文字が躍る。
「なんだか……全然内容違うじゃないですか」
全身タイツのマジックプリンスの格好でラストのシーンを呆然と見つめる誠。
「そうねえ、まあ吉田少佐のことだからこうなるんじゃないのかなあって思ってたんだけど……」
伊達眼鏡で先生風の雰囲気を表現していると自分で言っていたアイシャの言葉。そして映写機の隣でガッツポーズをしているだろう吉田の顔を思い出す。
「良いんじゃねえの?受けてるみたいだしさ」
魔法少女と呼ぶにはごてごてしたコスチューム。それ以前に少女と呼べない姿の要が明るくなった観客席で伸びをしているアイシャの知り合い達を眺めていた。
「そうだな、アイシャの友達が切れたら大変だからな」
そう言うカウラだが隣に立っているサラは微妙な表情をしていた。途中で帰る客をさばいていたパーラも引きつった笑みを浮かべている。
「それにしてもなんでこんなに空席が?始まった時はもっと埋まっていたような……」
楓の言葉に青ざめるサラとパーラ。
「楓ちゃん……人にはそれぞれ趣味や嗜好があって……」
「本当に楽しいのか?これが」
ごてごて飾りつけられた格好を見せびらかす楓。誠はその言葉でアイシャの米神がひくつき始めたのを見逃さなかった。
「よう!良く仕上がったろ?」
映写室から出てきた吉田が満面の笑みでアイシャを見下ろす。明らかにアイシャと吉田が昨日見た状態と違っていたのは間違いない。誠は二人の一触即発の雰囲気に逃げ出したい気分になった。
「そうね、さすがは吉田さんですね……」
アイシャの言葉が怒りで震えている。そこに突然女の子が入ってきてアイシャの髪を引っ張る。
「シャム!ちょっと!」
慌ててまとわりついてきたシャムを振りほどくアイシャ。
「もっとかっこよくならなかったのかなー!」
そう言って先ほどまでスクリーンに映っていた格好で杖をアイシャに構えるシャム。
「それは吉田君に言ってよ。私は知らないわよ!」
逃げ出そうとするアイシャだが、楽屋の入り口には赤い魔法少女ランの姿があった。
「クラウゼ……テメー!」
追い詰められたアイシャ。吉田の画像処理でシャムと最終決戦を前にディープキスをすると言う展開。当然それを知らないランとシャムは怒りの視線をアイシャに向けていた。
「知らないわよ!あれは吉田君が!」
「先任を君付けか?良い身分だな」
すっかりアイシャを追い詰めたことに満足そうにほくそ笑む吉田。誠は自業自得とは言えアイシャに同情の視線を送った。